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2022年オーストラリアの新語大賞は「Teal」/オーストラリア弁(新方言)を探せ 第10回

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 新語・流行語大賞は、辞書の出版社が中心となり、世界各地の言語で行われている。日本では、2022年の言葉として三省堂が「タイパ(タイム・パフォーマンスの略で時間的な効率のこと)」、小学館が「キーウ(ロシア語のキエフではなくウクライナ語表記が一般的なった)」、ユーキャンが「村神様(野球のヤクルトスワローズの村上宗隆選手の神がかった活躍から)」を大賞として選んだ。

 他にも、各社トップ10に選ばれた言葉をそれぞれ発表しているが、海外在住者にとっては意味の分からない新語ばかりで、毎年のことながら驚いてしまう。

 英語では、アメリカのメリアム・ウェブスターが「ガスライティング(意図的に嫌がらせをしたり偽情報を与えて精神的に追い詰めること)」を選び、イギリスのオックスフォードが「ゴブリン・モード(好き勝手に怠けること)」を選んだ。

 さて、我が国オーストラリアでは。マッコーリー辞書のマクミリアン社が選んだ22年の新語大賞は「Teal(ティール)」であった。

 ティールとは、もともと緑がかった青い色の名前のこと。22年の選挙では政治の世界で頻繁にこの言葉が登場した。それまでの政権を握っていたのは、2大政党の1つであるオーストラリア自由党(Liberal Party of Australia)であり、そのイメージ・カラーは青。その青い色に緑を混ぜたのがティールである。

 環境問題や地球温暖化を重視した多くの無所属や小さな政党の候補者たちが、青からもっとグリーンな世の中にしていこうというイメージ戦略にこの色を使い、彼らのことをティール・インディペンデンツやティールと呼ぶようになった。

 既に緑をイメージ・カラーに使っているオーストラリア緑の党(The Australian Greens)との差別化を図るためにも、このティール色が選ばれたのだろう。従来の青や緑といった原色よりもモダンでフレッシュな色であり、画像編集ソフト最大手のアドビによると、良識や改革といったイメージを持つ色でもある。

 その他、オーストラリアで選ばれた言葉は「truth-telling(アボリジニに対する過去の過ちの事実を語ること)」「goblin mode(上記イギリスのオックスフォードと同じ)」「spicy cough(新型コロナウイルスのこと)」「bachelor’s handbag(独身者に便利なスーパーで売っているハンドバッグのようなビニール袋に入ったロースト・チキン)」など。

 各国で選ばれたどの言葉も、その1年の社会情勢や文化、流行などを反映していて、大変興味深い。

■Macquarie Dictionary Word of the Year 2022:
https://www.macquariedictionary.com.au/resources/view/word/of/the/year/2022

■Adobe – Entice with the shy and reserved color teal:
https://www.adobe.com/creativecloud/design/hub/guides/entice-with-the-shy-color-teal#:~:text=Use%20teal%20to%20speak%20of,Shop%20For

プロフィル

ランス陽子

フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「ゴールドコースト弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/ゴールドコースト弁を探せプロジェクト

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