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今すぐ血管の健康管理を、世界の死因トップは心血管疾患─ナグモクリニック東京、斎藤糧三先生

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 日本では1年間の健康と幸運を享受できるよう願い、新年におせち料理を頂く文化があるが、おせち料理の食材がそれぞれ意味を持っていることはご存知だろうか。黒豆は「マメに元気に働けるように」と「無病息災」を祈って食べられ、たけのこは「子どもたちがすくすく成長していくように」、エビは長いひげや体の曲がった様子が老人に例えられ「腰が曲がるまで長生きできるよう」にという願いが込められている。また、中国には新年に健康と長寿を願い広東式卵麺「長寿麺」が食べられ、韓国では長い白餅を食べる文化がある。国が違っても、新年に似たような意味を持つ食べ物を食する習慣を守ってきた理由は、新年を迎える人びとの多くの希望が「健康」にあるからだろう。本記事では、2023年を健康に過ごすために何に気を付け、実践すべきか、メディア出演機会も多く持つ人気医師「ナグモクリニック東京」の斎藤糧三先生に話を伺った。

──ずばり、今年の健康に関するキーワードは何ですか。

 世界中の人びとが関心を持たなければならないキーワードは「血管健康」です。世界保健機関(WHO)の資料によると、世界の死因のトップは心血管疾患で年間約1800万人の人びとが死亡し、それは全体の死亡率の約32%に達すると言われています。心血管疾患は脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、狭心症などの疾患を指します。脳や心臓につながる血管が詰まったり、破裂して起こる病気です。

──日本人にとっても、心血管疾患は深刻な病気なのでしょうか。

 心疾患はがんに続き、日本人の死亡原因の2位に当たる疾患で、脳卒中による死亡も全体で約11%に達します。他のアジア諸国に比べて心血管疾患による死亡率が少しずつ減少していますが、それでも深刻で重要な病気だと言えます。

──心血管疾患をもたらす原因は何でしょうか。

 最大の原因は「高血圧」です。高血圧による日本の年間死亡者は約1万人に達し、全死亡原因の約20%を占めます。E POCH-JAPAN資料によると、心血管疾患死亡の約5 0%、脳卒中の52%、冠状動脈疾患(Coronary artery disease)による死亡者の約5 9%は、血圧 120/80mmHg以上の高血圧が原因でした(グラフ1)。

──高血圧は「沈黙の殺人者」と呼ばれているそうですが、理由はその死亡率と関連していますか。

 そうですね。高血圧は「沈黙の殺人者」「死神の警告」「血管の中の時限爆弾」など恐ろしいニックネームで呼ばれますが、その理由は生命を脅かす血管合併症の原因になるからです。高血圧合併症は脳卒中、心筋梗塞、狭心症、慢性腎臓病、網膜症などさまざまな身体器官に現れるようになりますが、病気が深刻になると死につながる可能性があります。幸い命を落とさなかったとしても、深刻な後遺症を残す可能性があります。

──日本の高血圧人口について教えてください。

 日本の高血圧人口は4300万人に達します。そのうち3100万人は血圧調節がうまくいかず、1400万人が自分は高血圧だと気付いていません。血圧の治療をしている人はたった1200万人(28%)だけという調査結果もあります。私たち人間の血管は20 代からコレステロールが積み重なりながら少しずつ狭くなり始め、老化が進むにつれて動脈硬化が起こり、さまざまな血管疾患を発生します。そのため特に超高齢化社会である日本では、血管疾患、その中でも高血圧は最も関心を持たなければならない疾患と言えます。

──高血圧の原因は何ですか。

 老化、塩分摂取、遺伝的要素など、高血圧の原因は多様です。日本人の1日平均の塩分摂取量は男性10.9g、女性9.3gで、WHOの推奨量である1日5gの倍に達する量です。塩の主成分であるナトリウムを多く摂取すると血圧が上昇しますが、血液中のナトリウム比重が増加すると、浸透圧の原理により体内水分が血管中に移動しながら血圧が増加したり、ナトリウムに対するホルモン系の反応が変化しつつ血圧が上昇することが知られています。また、高血圧は遺伝的要素が非常に高い疾患の1つで、親や兄弟姉妹の中で高血圧を持っている場合は、特に予防と管理に気を付けなければなりません。そして、中でも私が特に強調したい高血圧の原因の1つはコレステロールです。

──コレステロールは高血圧にどのように関連していますか。

 コレステロールは高血圧を引き起こす非常に重要な要素です。心臓から出た血液は酸素と栄養分をたくさん含み、血管という道路に沿って各身体部位に移動をします。つまり、血管は血液が流れる「生命の高速道路」と言えます。そして、この道路を狭くして詰まらせる犯人がまさに「コレステロール」です。道路が地すべりや交通事故、マナー違反などで道路が狭くなり渋滞を起こすのと同じ原理で、血管内膜にコレステロールが蓄積すると血管が狭くなります。すると、血液は狭い血管を通過するために高い圧力で流れるようになり、血圧が高くなるようになるのです(図1)。



──コレステロールはどのような過程で血管内膜に蓄積するのでしょうか。

 コレステロールが血管をどのように狭くし、詰まらせるかを理解するためには、まずコレステロールの運搬隊であるLDLとHDLを理解する必要があります。コレステロールは水に溶けない性質を持っているため、血液中を移動するためには特別な運搬隊が必要となるのですが、これがまさにLDLとHDLです。LDLとHDLは役割が異なります。LDLはコレステロールを載せ、必要な各細胞や組織に運搬する役割があります。逆に、HDLは使い切って残ったコレステロールや血管の内側に溜まったコレステロールを肝臓に戻す「逆輸送」の役割があります。HDLは血管の中の掃除トラックだと思ってください。問題は、コレステロールを運ぶLDLは酸化しやすいということです。酸化されたLDLは血管の内側に入り、マクロファージの餌になるとLDLは消え、コレステロールだけが残ります。このような過程を経て血管内膜にコレステロールが溜まってプラークが作られ、血管が狭くなるのです(図2)。


──血管にコレステロールが蓄積しないようにするにはどうすれば良いですか。

 単純にコレステロールを下げることだけを目標にしないでください。「総コレステロール値を下げる」「LDLコレステロール値を下げる」だけでは不十分だからです。大切なのは、LDLコレステロール値は下げ、HDLコレステロール値は高くすること。要するに、L/H比を下げることが大切なのです。血管の中にコレステロールを運ぶLDLの数値が低くなり、血管の中をきれいにするHDLの数値が高くなると、自然にコレステロールが低くなり、血管が健康できれいになります。また、LDLが低くなりHDLが高くなるとL/H比も低くなり、動脈硬化のリスクが軽減し、心脳血管疾患を予防することができるのです。

──HDLを上げてLDLを下げることが高血圧の予防となるわけですね。


 国内外のさまざまな研究結果が、コレステロール調節が高血圧のリスクを減らすことを証明しています。神奈川大学研究チームで150万人を対象にH D Lコレステロール値に基づいて高血圧の発生率を調べたところ、HDLレベルが高いグループ(90 -99mg /dL)の高血圧の発生率は23.7%、HDLが最も低かったグループ(20-29mg /dL)の発生率はそれよりはるかに高い41.2%に達しました。また、フィンランド人2616人を対象に23年間追跡調査した結果でも、L/H比率が高いほど心臓突然死のリスクが大きくなることが確認されました。特に、L/H比率が4.22以上の人は、L /H比率2.3以下の人に比べて心臓突然死のリスクが94%まで高まるという分析結果が出たのです。

──HDLを上げてLDLとL/H比を下げることの重要性は分かりましたが、血管健康のために私たちができる生活習慣にはどのようなものが挙げられますか。

 運動をすると心肺機能が向上し、血液循環がスムーズになり、血中の脂質を分解する酵素が活性化され、LDLが減少し、HDLが増加します。ウォーキング、自転車、水泳、ジョギングなどの有酸素運動が有効で、回数としては週3〜5日、1日40分~ 60分程度が適しています。また、炭水化物の摂取量を減らすことも血管の健康に役立ちます。炭水化物は運動などの活動に使用されますが、残った炭水化物は中性脂肪の形で脂肪細胞に保存されます。しかし、中性脂肪はLDLを作り、HDLの分解を促進するので、血管の健康に良くありません。

──斎藤先生がお勧めしたいコレステロールと血圧調節のための健康機能食品を教えて下さい。

 「レイデル・ポリコサノール10」ですね。LDLコレステロール値を下げ、L/H比を下げるので、血管の健康に役立ちます。「レイデル ポリコサノール10」は キューバ産サトウキビの葉と茎表面のワックスから抽出された合計8種類の高脂肪族アルコールの混合物です。2010年キューバ国立科学研究所で行われヒト臨床試験で健常者を対象に12週間キューバ産ポリコサノールを毎日10mgずつ摂取させた結果、総コレステロール(TC)が11.7%減少し、悪玉コレステロール(LDL)のレベルが22.1%減少。更に心血管疾患の重要な予測因子であるLDL/HDL比は27.9%改善することが分かりました。また、韓国人を対象とした臨床試験で収縮期血圧を7.7%低下させることも確認されました。ポリコサノールはHDLを上げてLDLを下げるので、コレステロール値だけでなく血圧調節にも役立つと考えられます。

──本日は貴重なお話をありがとうございました。

斎藤糧三
「ナグモクリニック東京」アンチエイジング・機能性医学外来医長。2013年「一般社団法人日本ファンクションダイエット協会」を設立。17年、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。18年ソフトウェア医療機器の開発企業として「株式会社ライフクエスト」を設立。著作に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)。『慢性病を根本から治す“機能性医学”の考え方』(光文社新書)などがある

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