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ANU学生歌舞伎「ザ・歌舞伎」一座
第45回公演に留学生たちが参加

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ANU学生歌舞伎の役者と裏方一同

 コロナ禍のため、2 年間上演されなかった恒例の、オーストラリア国立大学(ANU)アジア・太平洋カレッジ日本センター及び在豪日本大使館共催の学生歌舞伎を中心とする「第45回日本の夕べ」が、3年ぶりにキャンベラ豪日協会などの協賛の下、10月7~9日の3日間にわたり同大学構内にある劇場「キャンベラREPシアター」で行われた。

 公演期間中、2011年3月の「東日本大震災」の被災者に対する義援金を募り、3日間の公演で集まった1000ドル余りが、震災で親を失った中学生・高校生を定期的にキャンベラに招く「東北青少年プログラム」を主催している豪日協会に寄付された。

 初日は、前座としてルパート・サマーソンさんによる尺八演奏、2日目と3日目は交換留学生として1年間ANUで学んでいる大西遥也君が日本舞踊「七福神」で雰囲気を盛り上げた後、歌舞伎の上演に移った。

 今年の学生歌舞伎は、劇中の台詞「しがねえ恋の情けが仇」で知られている『与よはなさけうきなのよこぐし話情浮名横櫛』という演し物で、「ザ・歌舞伎」にとっては初挑戦の芝居であった。序幕では上総木更津の浜辺で主人公のお富と与三郎が出会う場面がしっとりと演じ、長い芝居のため第二幕は粗筋をスクリーンに映したイラストと声優でこなし、第三幕のお富と与三郎が曲折を経て再会する経緯を披露した。

 ANU学生歌舞伎の伝統で、主として男子学生が女形を、女子学生が男役を演じることに変わりはないが、昨年同様、今回もその伝統に固執せず、男子学生にも女子学生にも自由に役を選んでもらった。今年も、主役級の役者が長い台詞を淀みなく誦(そらん)じて、観客の拍手喝采を浴びた。また、例年通り、日本人留学生や、日本文化に興味と関心のあるさまざまな国からの留学生も多数参加した。

 台詞は台本通り全て日本語で演じるため、日本語を理解しない多くの観客のために、以前から取り入れている英語の字幕方式を今年も提供し、好評を得た。

 今回も満席に近い観客席からの熱気が、演じる役者にもしっかり伝わり、与三郎役の主役が「見得」を披露して会場から「成田屋!」という掛け声が掛かった時も、他の客が拍手で応じ、芝居の雰囲気を盛り上げてくれ、役者・裏方一同「役者・裏方」冥利に尽きる感動を味わった。今年も、3日間ともプロンプターが開店休業に近い状態だったという理想的な舞台で、役者も観客も大いに楽しんだと言えよう。

(文責=池田俊一/オーストラリア国立大学アジア・太平洋カレッジ日本センター客員研究員、歌舞伎演出・監督)

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