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2023年、新しい年に向かって「食べて見て座談会」/出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記

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出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記
~オーストラリアでの日本食の変遷を辿る~

其の伍拾六 2023年、新しい年に向かって「食べて見て座談会」

 シドニーのチャッツウッドにある私のスタジオでは、オーストラリアで活躍する和食料理人のサポートを行う「Washoku Lovers」との共催で、2020年からシドニーの日本人シェフたちとの勉強会「食べて見て座談会」を定期的に開催してきました。しかし、昨今のコロナ禍により開催は中断。その第8回目を今年、いよいよ再開しようと着々と準備を進めています。

 私の所属する全国日本調理師技能士会連合会(技調連)では、名誉顧問の道場六三郎先生が、片田勝紀会長と共に10年以上にわたり日本国内を回り、日本料理を原点から学ぶ勉強会を開催し、包匠師範の方々を含め大勢の料理人の方々が集まり、意見交換などが活発に行われています。その中には、日本料理の原点と言われた「包丁式」の精神について学ぶ機会もあったようです。現在、技調連では道場先生を中心に「現代日本料理六人展」などを開催し、四季を通じて日本料理の技能を発表されているようです。

 このような動きから、私自身も、若い世代の料理人たちと、古典から現代までの日本料理の流れを見つめながら勉強することが、新しい時代への発展につながるのではないかという思いを込め、シドニーで何ができるのかを検証しながら「食べて見て座談会」をスタートした次第です。

 第1回目のプレゼンターは元「四季レストラン」の河野巧氏。彼が修行した「吉兆」の看板メニューでもある鯛茶漬けを再現し、日本料理の基礎を丁寧に紹介して頂きました。また、「Grow Green Tea Company」から摘んだばかりの茶葉が届けられ、それを河野氏が天ぷらに。試食したゲストの皆さんは、シドニーでこのようなコラボが体験できることに感動していました。

 第2回目は「レストラン原田」の原田氏が、熟成食材のうまみをテーマに、コチを使って熟成食材の調理法の可能性と問題点を提起。参加者の皆でディスカッションを行いました。

 第3 回目は「Masu a Group」代表の定松勝義氏が、牛肉をテーマに和牛とアンガス牛の特徴を紹介

しながら調理、試食。更にMasuyaのソムリエに、和食とワインのマリアージュについて話をして頂いたり、「Sakelier」から純米生酛「大七」などを提供して頂きました。

 第4回、5回目は、「Gaku Robata Grill」の花倉嗣文シェフが熟成を施した魚をどのように完成させていくのかを丁寧に見せてくれ、犬飼春信シェフが、ロブション氏から学んだという貴重な料理を再現してくれて参加者は大いに感動しました。

 第6回は「KURO BAR & DINING」から寺本考宏氏が、鴨の燻製料理をテーマにデモンストレーションを行いました。卵の黄身の燻製の茶漬け風リゾットには、参加者一同、シンプルな見た目の中の深い味わいに感動させられました。

 更に、みりんとホワイト・チョコレートをエスプーマに入れ、窒素ガスを使って瞬間冷凍させたデザートを、息を呑んで楽しみました。このような演出は、私自身たいへん勉強になりました。

 第7回は、オーストラリアにおいてほとんどのレストランで、生きた鰻をおろして日本の蒲焼きにするというのをまだ聞いたことがなかったので、「鰻」をテーマに挙げました。生きた鰻を「Musemeci Seafood」に提供して頂き、参加者の中から希望者に鰻をおろしてもらい、蒲焼きにしました。

 活け物の鰻をまな板に目打ちで止めることに悪戦苦闘しつつも、実践を交えながら、参加者それぞれが意見を交換し合い、これまでの会とは違った、より一層インタラクティブな体験ができました。

 特に2022年は、シドニー・モーニング・ヘラルドのグッドフード・ガイドで、我々日本勢の活躍が認められて数々のハットを取ることができました。

 これからもこの「食べて見て座談会」が、シドニーの日本人シェフたちが共に学び、成長できる会である場であることを願って止みません。

このコラムの著者

出倉秀男(憲秀)

出倉秀男(憲秀)

料理研究家。英文による日本料理の著者、Fine Arts of Japanese Cooking、Encyclopaedia of Japanese cuisine、Japanese cooking at home, Essentially Japanese他著書多数 。Japanese Functions of Sydney代表。Culinary Studio Dekura代表。外務省大臣賞、農林水産大臣賞受賞。シドニー四条真流師範、四條司家師範、全国技能士連盟師範、日本食普及親善大使。2021年春の叙勲で日本国より旭日双光章を受章。





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