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冷静に考える/福島先生の人生日々勉強

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冷静に考える

 親や先生に注意された時、友人に問題点を指摘された時、どうして腹が立つのでしょう。それは、相手の意見や知見の有用な部分を取り入れるだけの安定した自己評価がないからです。確たる自信がないので、相手から自分と違う意見や主張を提示されると、自分そのものが侮辱され、否定されたと思い込み、反射的に不愉快な気分や怒りの感情に襲われてしまうのです。

 私たちは自分を肯定することによって、自信を持って生きていくことができます。自信は生きていく糧なのです。思い込みとは言え、その生きていく糧を奪われたとなると、生命の危機に晒されることになり、防衛本能から強く反発し、攻撃するということにもなるわけです。

 実際、自分が悪いと分かっていても、素直に受け入れることは難しく、それでも認めざるを得なくなると、自己評価が下がり、嫌な気持ちになってしまいます。自己否定されたと感じると、自己を嫌悪するか、相手を嫌悪するか、あるいは相手を嫌悪してしまった自分を嫌悪するか、といった反応になります。

 特に自己評価が不安定で情緒が落ち着かない人は、自己愛に偏り、他人の批判や反論を冷静に受け取ることができないので、自分に対して批判的な態度を取った相手のことを許せず、関係を修復することが難しくなってしまいます。

 自己愛が強いと、指摘をまるで受け入れず、問題をすり替えて反論したり、暴力的になったり、自分を怒らせたとして相手に制裁を加えたりします。指摘した相手を悪者にする、馬鹿にする、あるいは、自分は変わるつもりはないと開き直る、弱らせて後悔させてやるといった傲慢さと復讐心を持つなど、他者からの指摘を極度に嫌い、一旦まず受け止めるということができない傾向があるのです。低い評価に過剰に反応し、残忍で攻撃的な発言も多くなります。

 また、自己愛の強い人が自分を否定されたと感じると、怒りがすさまじく自己弁護が強烈なので、相手が傷付いていることも全く分かりませんし、自分への批判だけをいつまでも強く記憶し、更にそのことで相手を攻撃したことはすっかり忘れてしまっているという自己中心的人間になりがちです。もちろん、失敗や批判から新しく何かを学ぶことはできません。

 そこまで極端でなくとも、人間なら誰でも無意識のうちに自分を守りひいきをしてしまいます。大人になってから成長し続けるためにも、子どものうちから、心をニュートラルにして、解決に向けて冷静に考える練習をしましょう。大人でも間に合います。まずは反省から。

このコラムの著者

教育専門家 福島 摂子

教育専門家 福島 摂子

教育相談及び、海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命とした私塾『福島塾』を開き、シドニーを中心に指導を行う。2005年より拠点を日本へ移し、広く国内外の教育指導を行い、オーストラリア在住者への情報提供やカウンセリング指導も継続中

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