出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記
~オーストラリアでの日本食の変遷を辿る~
其の伍拾七 日本の飲食業界の動き
2022年、日本で食団連(日本飲食団体連合会)が本格的にスタートしました。
20年からのコロナ禍によるさまざまな混乱の中で、外食産業はメディアでも取り上げられた通り、とても大きな打撃を受けました。そのような状況下で、東京・大阪を中心としたレストランのオーナー・シェフや外食産業の企業経営者らが集結し、状況の改善を内閣府へ懇願。政府、与野党、自治体への協力を強く要望すると共に、政策提言がなされました。
更に21年6月、飲食に関わる18団体が「外食破壊寸前、事業者の声」と題した記者会見を開催。現状を訴えると、大きな反響を呼びました。そしてこの会見をきっかけとし、緊急事態宣言解除に伴い、条件付きでの酒類の販売が可能になることとなりました。
非常時において強力な結束力が発揮された一連の活動が、業界の希望となったことを受け、同年12月22日、一般社団法人として食団連の設立へとつながりました。
食団連の初期会長には服部学園理事の服部幸應氏、理事には米田肇氏、里井真由美氏、副会長には村田吉弘氏、佐藤祐久氏、山下春幸氏が就任。その他、理事・監事・事務局として飲食業界の著名人が名を連ねており、会員団体、オフィシャル・パートナーとしてキッコーマンも参加しています。
食団連は、外食産業に関わるあらゆる人たちの生の声に耳を傾けながら、共に食文化を未来へとつなぎ、食産業の発展、食に関わる徒事者の社会的地位向上に寄与することを活動の目的にしています。コロナ禍で大きな打撃を負った外食産業従事者にとっては、何と心強いことではないでしょうか。
今後、「食団連」の活動が、外食産業の活性化につながり、そのことで食文化が豊かになり、国民生活もが豊かになっていく、そんな大きな助力となると信じています。
さて、和食という伝統の味を継承し、新たな可能性を求めて活動する公益社団法人「日本料理研究会」という団体があります。
会員の日本料理技術の向上と更なる研究のために、厳選した調理師(日本料理研究会師範〉による月例の料理展示会、料理講習会や、技術を競い合う「全国日本料理コンクール」などを開催。また、機関紙「月刊日本料理」の刊行にも携わっています。
1930年設立時の初代会長は三宅洋子女史でした。2022年にはその御子息の三宅健介氏が会長に就任されています。
今後も「伝統を大切に、そしてこれからの日本料理を考える」をテーマに、日本料理の普及と開発に努めながら、料理人同士による技術や知識の共有を目指していく他、出版事業を始め、海外での料理人リクルート・ビジネスや、料理学校の開設・提携なども行いながら、料理人の社会的向上にもつなげていくとのことです。
三宅健介氏は、17年に農林水産省から日本食普及特別親善大使にも任命されており、「日本料理研究会」の国内外での活動が期待されています。その活動の中で、海外の外国人シェフが日本料理の調理師技能検定をオンラインで受講できるサービスを開始したと聞きます。このサービスも近い将来、本格的にオーストラリアにも上陸することでしょう。
このように、日本から生まれた動きが、我々オーストラリアのシェフたち(日本料理だけに限らず)によるグローバルな視点から見た活躍につながり、確かなサイクルとなって実っていくことを願って止みません。
2023年は、興味深い年になりそうです。
■食団連Web: shokudanren.jp
■日本料理研究会Web: www.nihonryori-ken.or.jp
■Certification of Cooking Skills for Japanese cuisine in Foreign Countries
Web: japanese-cookingcert.com
このコラムの著者
出倉秀男(憲秀)
料理研究家。英文による日本料理の著者、Fine Arts of Japanese Cooking、Encyclopaedia of Japanese cuisine、Japanese cooking at home, Essentially Japanese他著書多数 。Japanese Functions of Sydney代表。Culinary Studio Dekura代表。外務省大臣賞、農林水産大臣賞受賞。シドニー四条真流師範、四條司家師範、全国技能士連盟師範、日本食普及親善大使。2021年春の叙勲で日本国より旭日双光章を受章。