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Brewing/花のある生活 – flower in life – 第51回

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2つで1つのような徳利型の花器を使い、それぞれが自由に伸びていく感じを、紅梅とオーニソガラムで1つの作品として表現しています

 日本生まれの清酒と呼ばれるお酒は、「SAKE」というネーミングで世界中で好まれています。水、米、米麹と極めてシンプルな原料だけに、美しい水や良質な米が選ばれ、製造される行程を大切にされています。

 特に日本で造られる日本酒は神事ごとのような荘厳さがあり、心身共に清められた造り手による一献には、清々しさを感じることもあります。

 新酒を搾り始めるころでしょうか、「杉玉」と言われる鞠(まり)のようなものが軒先に吊るされ、季節の風物詩となっています。緑緑しい杉玉が茶色に変わるころには酒の風合いが変化するのだと聞きました。

 日本酒を知るとそこには深い歴史があり、醸造する行程には、昔の知識では計り知れなかったことが、神がかりのように感じられて、日本国内には酒の神が祀られた神社が幾つもあるようです。

 繊細な風合いを持つ清酒をブラジル国内で広めたいとの思いで、ブラジル人の友が山形市の老舗酒蔵で酒造りを学ぶために来日しました。

 女性医師という職業の傍で日本酒ソムリエの資格を持ち、現地で清酒造りをしている友人のために、私は京都嵐山の松尾大社に案内することになりました。そこには酒の神が祀られ全国から醸造家が参拝に来ています。



 蒸した米に麹菌を付けると、まるで花が咲いたような形に変化するそうで、米糀となった物は酵素の宝庫となり、いろいろな健康効果を発揮するそうです。産婦人科の医師として命に携わる立場から、人びとの健康を守る一方で醸造することに魅了された彼女の清酒の銘柄は「巴御前」。友人の気質に似ているところがあります。

 自然と向き合いながら、歴史を知り文化を育むため、人の手によって造られる過程には、いけばなにも共通するところがあります。目的に向かって共に歩み、目指すものがそれぞれ違っていても一緒に学びを分かち合ったり、助け合える一瞬一瞬は、人と人とのBrewingのようで、人生に潤いを醸し出すように思います。

このコラムの著者

Yoshimi

いけばな作家
Web: https://www.7elements.me/

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