コラムが休止となった関係で「スマホ・タブレットに子どもが夢中! その功罪を真面目に考えてみる(1)」と題した前回のコラムから実に4カ月。既に息子のスマホ・タブレット中毒は解決済みだ。今では「あと5分ね〜」「は〜い」、(5分後)「そろそろ終わりだよ」「……は〜い」と自らスマホ・タブレットを手放すようになった。そんなわけで、第2弾を書く意欲は残念ながら僕の中からほとんどきれいさっぱり消え去ってしまったのだが、一応私見は添えておこう。
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僕たち夫婦が最も問題だと考えたのは「目」への影響と、放っておくと全く動かないことによる「姿勢」への影響だった。詰まるところ、身体への物理的な影響を心配したわけだ。
何時間も手放さず、無理に取り上げようとすると泣き叫ぶため困り果てていたのだが、前述の懸念点は長時間の連続使用さえやめさせることができればパウっと問題解決(※子ども用アニメ内のフレーズ。最近の僕の脳内にはこんなのばかりが飛び交っている)。で、どうしたかというと、なぜ止めなければならないかを根気よく説明し、iPadを手から離させることを実践、それを何度も繰り返した。子どもも納得の上であればごねなくなるわけで、テクニカルなソリューションではないが、結局のところ、これが最善手ではなかったかと思っている。
また、1つの世界に長時間浸かり続ける、つまり中毒状態になっているように見えること、それ自体がどうなのか、といういわば精神面における影響も懸念点ではあった。
巷では「スマホ脳」云々他、スマホ内の世界にどっぷり浸かることで、どのような問題を引き起こすかがよく論じられているが、根拠が薄弱、推論の粋を出ずよく分からないものも少なくない。ファミコン登場以来「ゲーム脳」という言葉が世の中を飛び交ったり、アニメやマンガの描写の影響など、同様の議論は実はもうずーっと長いこと続いてきているのではなかろうか。
初代ファミコン世代の僕自身、親に「ファミコンは1日1時間」と言われ、「1時間じゃドラクエなんて永遠にクリアできない」などと反論したりしていた。中学受験を控えた小学校高学年の時には禁止されていたファミコンを両親が出掛けている時にこっそりタンスから見つけ出してプレイ、バレて怒られる、なんてことも繰り返した。プレステ登場時には、なんなら2日間くらい部屋にこもってファイナルファンタジーに熱中、ひどい時は食事すらしなかった。思い返すと、僕自身子どもたちに偉いことを言えた立場ではない。
そして、そんな僕だったけれど、それでも今は一応立派に社会人として育ち働いているわけで……(北の国からの純風)。
結局当たり前すぎる結論にはなるが「使い方」を間違わなければ良い。その昔、携帯電話が普及し始めた時「待ち合わせで相手を待ち焦がれるなどといったストーリーが世の中から失われてしまう。これは大きな損失だ」などと息巻き、一瞬アンチにもなったが、結局便利だからすぐに使い始めた。便利なテクノロジーは使うに越したことはない。使った上で取捨選択すれば良いのだ。
膨大な情報を得られ、コミュニケーションもでき、お金の支払いから、家計管理、健康管理、ゲーム、コンテンツ視聴まで、何でもほぼ全て手元で完結する。一昔前を考えると、これはまさに夢の道具、なんならドラえもんの世界に近い。そしてこの道具と共に育った子どもたちがどのように育っていくのか、きちんと思いを理解しながら見守り、間違っていると思った時にしっかりと丁寧に修正していく。そんな寛容な気持ちを持ってこれからも子育てに臨んでいきたい。真面目か! 笑
夢叶う、そしてシドニー近郊おすすめスポット
どこの街だかよく覚えていないが、街中を移動する際、僕はほふく前進を多用していた。どこへ行くにもそうしていた。街の構造的にそれが適していたのかどうかは今となってははっきり思い出せないが、友人に「なぜ、ほふく前進するのか」と問われた際に「これが一番早いからだ」と答えたことだけは覚えている。今考えれば常にほふく前進で移動するなど、体力の無駄遣い、いや、見る人によればかなりの奇人的行為と映るとも思うが、その時は自身の行動に疑念を抱くことなく、それがベストの移動法だと考えていた。
という夢を見た。そして夏目漱石の短編集『夢十夜』を思い出した。全てが「こんな夢を見た」から始める夢をモチーフにした幻想的なテイストで知られる作品集だ。子どものころ、その映画版を母と見に行った際には、奇妙な雰囲気の話ばかりで、夢だからきちんとストーリーが完結することもなく、よく分からなかった。だが、不思議に心に強い印象を残したことを覚えている。
ほふく前進の夢から目覚め、なぜこんな夢を見たのだろうと頭を悩ますと、答えはすぐに見つかった。昨今、1歳になろうとするアリサの「ハイハイ」の移動スピードが驚くほど早くなっていたのだ。一瞬目を話すとテレポーテーションしたのではないかというくらいの距離を移動していることに驚きを禁じ得なく、それが夢に反映されたに違いない。
さて、なぜいきなりほふく前進の夢の話から始めたのかといえば、この夢を見て目覚めた日がちょうど来豪していた鹿島アントラーズ・ユースの試合観戦の日だったからだ。大のサッカー日本代表好きのMEGはユース・チームで監督などを勤めている柳沢敦さん、小笠原満男さんら、元日本代表の来豪に目をキラキラさせていた(ニュース記事は「鹿島アントラーズ 日豪プレス」で検索)。ほふく前進の夢に「夢って面白いな」と思っていた矢先、日本代表選手に会うという妻の1つの夢がかなう。これも何かしらの符牒化か(そんなわけはない)。当日は柳沢さんと僕以外の家族は写真を撮ることができてご満悦だった。せっかくなので写真を掲載しておこう。
さて、限られたスペースに詰め込みになるが、最後に12年シドニーに住んでいて初めて知ったイチオシ・スポットの紹介。イースター休暇初日に家族で行ったボビン・ヘッドがかなり良かった。シドニー北郊の街チャッツウッドを起点にするとだいたいそこから更に北東に30分ほどいった所にあるナショナル・パークで、川沿いでBBQやSUP、カヤックなどを楽しめるエリアだがそこにマングローブの森があり、水上に巡らされた遊歩道で森の中を散策できるのだ。遊歩道はバギーでも歩け、高い所には柵があるので小さな子どもがいるご家庭にもお勧めだ。休日の際にはぜひ(そんなん知ってたわ、という人は失礼!)。
このコラムの著者
馬場一哉(BBK)
雑誌編集、ウェブ編集などの経歴を経て2011年来豪。14年1月から「Nichigo Press」編集長に。21年9月、同メディア・新運営会社「Nichigo Press Media Group」代表取締役社長に就任。バスケ、スキー、サーフィン、筋子を愛し、常にネタ探しに奔走する根っからの編集記者(だったが、現在は会社経営に追われている)。趣味ダイエット、特技リバウンド。料理、読書、晩酌好きのじじい気質。二児の父
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