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「まさか本当に戦争になるなんて」─ウクライナのバレエ団来豪中、所属の日本人バレリーナ・長澤美絵さんインタビュー

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 バレエ大国とも呼ばれるウクライナのグランド・キエフ・バレエ団。ロシアとの戦争の影響から、祖国を離れ、海外公演を続けており、現在はオーストラリア公演を全豪で行っている。同バレエ団に所属するウクライナで活躍する日本人バレリーナ、長澤美絵さんへのインタビューを行った。
(インタビュー:馬場一哉)


■公演・チケット情報はこちら
Web: www.ukraineballet.com.au

馬場:長澤さんのバレエとの出合い、そしてウクライナを活躍の場に移されたきっかけは何だったのですか。

長澤:バレエは3歳からやっているのですが、ちょうど中学3年生の時に、偶然NHKの『地球に乾杯』という番組で、ロシアのサンクトペテルブルクにあるワガノワ・バレエ・アカデミーの生徒さんたちの生活を追ったドキュメンタリーを見たんです。その時に、本当にもう稲妻が走ったようにビビビッときて、「あ、これをやりたい!」と思ったんです。そのスタイルに一瞬にして惹きつけられ、以来、バレエの本場の国へと留学することが夢になりました。そこで高校に入ってから、ロシア人の先生が指導しているバレエ教室を探して、毎日通うようになりました。その後、オーディションに合格し、18歳の時にサンクトペテルブルクへの留学を果たしました。

馬場:夢を果たされたわけですね。

長澤:ええ。ただ、留学生だったので2年間しかいられません。そこで、卒業時にヨーロッパ中のさまざまなオーディションを受けたのですが、身長の低さもネックとなり、なかなか合格できず、所属するバレエ団が見つからないまま日本に帰ることになったのです。帰国後、バレエはもちろん続けたのですが、たまたま参加したある公演で、ゲストにウクライナの方がいらっしゃいました。それが本当に奇跡的な出会いで、一緒に踊らせて頂いたあと、所属するバレエ団が決まっていないことを話したら「じゃあ僕たちのバレエ団に来たら?」など親身に話を聞いてくださったのです。その時、更に偶然なのですがウクライナのドネツク・バレエ団のディレクターさんが日本に来られていました。そこで、自分のDVDやら何やら、いろいろ書類を持ってすぐに彼のところに駆けつけて「入れてください!」と言いに行ったのです。その際に、ゲストで来ていた一緒に踊ったダンサーたちが「美絵なら大丈夫だよ」と話を通してくれました。そして「じゃあ9月からおいで」と……。本当にそんな流れで公演から1カ月半後にウクライナに行くことになったのです。

馬場:すばらしい巡り合わせですね。

長澤:オーディションで落ちるたびに「人生の終わり」と落ち込んでいたのですが、今となっては、私が一番好きだったロシア・バレエ、ウクライナ・バレエへと巡り合わせてくれるための経過だったのかなと思います。

「ウクライナは第二の故郷」

馬場:ウクライナを拠点に20年近く活動されている中、昨年、ロシアのウクライナ侵攻が開始されました。

長澤:はい。戦争がはじまる少し前に日本大使館の方から「できることなら日本に帰国してください」という連絡を頂きまして、私とウクライナ人の主人と、あと小さい息子がいるのですが、3人で半信半疑のまま日本に帰りました。私たちが日本へと飛び立ったのが、戦争が起きるちょうど10日前の2月12日でした。全く何の前触れもありませんでしたし、普通の生活をし、ウクライナを発つ前日まで舞台に立っていました。大使館からロシアとウクライナの関係が緊張状態にある、という話を聞き、ニュースも少しざわついていましたが、まさか戦争になるなんて、という気持ちでした。ちょっとした一時帰国のようなつもりで、ウクライナの仲間や友人にも軽くハグして「2週間後に会おうね」なんて言って飛び立ったくらいです。コロナ・ウイルスの関係で自宅待機中にニュースで知ったのですが、本当に信じられませんでした。

馬場:今でも思いとしてはウクライナに戻りたい、というお気持ちでいらっしゃいますか。

長澤:ええ。冷静に考えると終戦しても復興に時間が掛かることは分かっていますが、ただやはり、私にとっては第二の故郷なので、そうですね、一刻も早く帰りたいというのが本音です。

馬場:そのような状況下で今回来豪を果たされたわけですが、現在世界ツアー中でオーストラリアは8カ国目と伺っています。

長澤:今回参加しているカンパニー、バレエ団は決まった拠点はなく、ツアーの時に集まって公演を行うという形を取っていて、戦争が始まる1年くらい前からご一緒させて頂き、現在に至ります。フランス、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、ポーランドとヨーロッパを周り、その後ニュージーランドを経てオーストラリアに入りました。

ウクライナ伝統の演目『森の詩』

馬場:今回の演目は第一部『森の詩(Forest Song)』、第二部『ドンキ・ホーテ(Don Quixote)』です。『ドンキ・ホーテ』は言わずもがな皆様知っておられる作品だと思いますが『森の詩』はウクライナ伝統のお話と伺っています。

長澤:はい。とても美しいバレエです。ウクライナの村に住む少年と森に住む妖精の愛の物語で、作曲、衣装、ストーリー、全てがウクライナで作られた珍しい作品です。クラシックとはまた違うのですが、ウクライナの伝統的な光景、例えば結婚式の雰囲気など、ウクライナを知ってもらうためにはぴったりなバレエだと思います。『ドン・キホーテ』は、本来は全部で三幕の構成なのですが、今回は省略バージョンでそれを二幕にギュッと凝縮し、とてもテンポが良くて見やすくなっていると思います。

馬場:ぜひ多くの方に見て頂きたいですね。最後に、本記事を読まれている、中でも現在オーストラリアに住まれている方々にメッセージを頂けますか。

長澤:今回オーストラリアに来る機会を持ててうれしく思います。私が今までお世話になってきたウクライナの大好きなメンバーたちとの公演になります。ぜひ見に来て頂きたいです。舞台を見て頂いている時は、戦争とかそういうことは関係なく、ただただ目の前の舞台を楽しんで頂けたらなと思います。

馬場:長澤さんがウクライナに無事帰国できる日を、私たちも祈念しております。本日はありがとうございました。

Info

■公演日程:公開中~6月30日(金)全国20公演
■予定演目:『森の詩』『ドン・キホーテ』
■公演・チケット詳細
 Web: www.ukraineballet.com.au





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