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不動/日豪フットボール新時代 第135回

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(Photo by Kyoko Kurihara)

 男女を問わず、QLD州のトップ・リーグNPL QLDには多くの日本人選手がプレーしており、それぞれが所属クラブで貴重な戦力となっている。その中でもここ数年の存在感、貢献度などを考えると、今回の主役の登場がここまで遅れたのは筆者の怠慢だ。誠に遅ればせながら、QLD州フットボール界隈で多大なる尊敬を集める林萌々(28)にご登場を願った。
 19年になでしこリーグ2部の岡山湯郷Belleを退団後、来豪。以来、ゴールドコースト・ユナイテッド(GCU)でセンター・バック、またはボランチとして、クラブの欠くべからざる中心選手としてプレーし続ける林。決して恵まれた上背がなくてもフィジカルの強さが求められるリーグで体を張れるのは、重心が低く当たり負けしない強さと、相手の攻撃の流れを読むことに長けているから。求められればより攻撃的位置でもプレーできるユーティリティーの高さも彼女の強みだ。

 フットボール・クイーンズランド(FQ)が発表するリーグ戦各節のベスト・イレブンの常連の林だが、ここ豪州で順風満帆のフットボール人生を歩んできたかと言えば、決してそうではない。
 20年9月にはキャリアの継続が危ぶまれる左前十字靭帯断裂の大けがを負い、長期離脱を余儀なくされた。過酷なリハビリと手術を乗り越え、不死鳥のように復帰してからは、けが以前より更に成熟したクオリティーを発揮して不動のレギュラーとしてピッチに立ち続ける。
 ここ数年、ライオンズFCが絶対王者として君臨し続けるNPLW。今季も首位を走るライオンズに林のGCUは何とか食い下がり、今後は逆転でのリーグ優勝をねらいつつ、年間王者を決める一発勝負のファイナル参戦確定の4位以内を最低限の目標として戦う。
 誰もがそのクオリティーを評価する林に、選手として足りないものがあるとすればそれは「王者」の称号だけ。今日も小さな体を張り続ける彼女が破顔一笑、チャンピオン・トロフィーを掲げる姿を見られるか。今季のNPLは9月まで続く。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカの呟き「この原稿を読者諸氏が手に取るころには、自国開催の女子W杯が直前に迫っているはずだ。もし、まだ間に合うようであれば、ぜひお近くのフットボール・スタジアムに足を運んで『世界』を感じてきて欲しい。W杯でしか経験できない特別な何かがあなたを必ずや魅了するはずだ」





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