冬至を過ぎたとは言え、7、8月は冬真っ只中のタスマニア。外に出るのもなこの時季は、冬の名産を楽しみましょう。数あるタスマニア名産の中でも有名なのが牡蠣。生産者も生産量も多く、どこでも簡単に手に入ります。50件ほどの牡蠣養殖場が州沿岸部に点在し、年間で4000万個以上を出荷しているとか。
タスマニアで生産されるパシフィック・オイスター(Pacific Oyster)は、実は日本の真牡蠣と同品種。実際に1950年代に仙台、広島、熊本から稚貝を持ち込んだのが始まりです。しばらくは定着せずに一時は頓挫した牡蠣養殖ですが、今では州を代表する産業に成長しました。
タスマニアでの養殖は日本と違い、大半が入江や河口部の浅い汽水域で行われます。50センチほどのザルに牡蠣を入れ、水面ギリギリの高さに並べて育てます。沿岸部を走っていると見掛けるの列は、牡蠣棚です。
潮の干満によって水面上に出ると、牡蠣は直射日光を受けて強い殻を形成。時折り回転機に掛けて外縁を削ることで、カップ状の殻に育っていきます。ある程度まで育てば栄養豊富な外海に持ち出し、大きく育ってから出荷されます。
昔に比べサイズが小さくなったという話を聞きますが、これには理由があります。10年ほど前から米国を中心に世界中でオイスター・バーが流行り始めたのですが、もともと生ものを食べない人が多く、少し大きいと、ひと口で飲み込めない、数が食べられない、気持ち悪いなどと、以前のサイズでは売れなくなったのです。生産側にも1年少なく2年で出荷できるメリットがあり、現在のサイズが標準になりました。
牡蠣の旬は、冷たい水にさらされ、身が一番締まる冬。春が近づけば産卵のため、大きくクリーミーになりますが、生臭さも出てきます。現在では年間を通して一定の品質の牡蠣を楽しめますが、やはり旬は旬、生でも煮ても焼いても揚げても良しのタスマニア・オイスターを、一番おいしいこの時期にぜひお試し下さい。
このコラムの著者
稲田 正人
タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web: www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中