オーストラリア弁(新方言)を探せ 第15回
外国語を取り入れる時、「どのような言葉が一番多いのか」という研究によると、どのような言語同士であっても、やはり名詞を取り入れるケースが最も多いようである。名詞は、物の名前や、目に見えないものであっても具体的な対象を表すための言葉だ。英語を元にした日本のカタカナ語でも、ブレッド、ノート、マザー、ティーチャー、パーク、ステーション、ビジネス、クリスマスといった、物、人、場所、概念などを表す言葉として、すっかり一般的な言葉になっている。
名詞に比べるとかなり少ないのだが、オーストラリアに住む日本人の間では、日本ではあまり使われていない英語の動詞も日本語の会話に取り入れてしまうことが多い。例えば「organise(オーガナイズ)」という言葉。組織する、計画する、催すといった意味があるが、こちらでは何かを手配したり、企画したりする時にかなり頻繁に使われる言葉だ。飲み会をオーガナイズしたり、家の修理をオーガナイズしたりすることもある。日本語ではなかなか直訳しにくい単語なため、これをそのまま「オーガナイズする」という形で日本語の会話に取り入れている在豪日本人が多いようである。
こういった場合、英語の動詞というものはそのままの形で日本語にすることはできないので、必然的に「~する」といった形にして取り入れることになる。他には、以前にも取り上げた「ピックする(人を迎えに行く、物を受け取る)」などの他、「(お金を)トランスファーする(送金する)」「ブックする(予約する)」「コンタクトする(連絡する)」「ディスカウントする」「ペイする(支払う)」「パークする(駐車する)」「チョップする(切る)」「フィックスする(直す)」「サブミットする(提出する)」「コネクトする(つなぐ)」「アプライする(申し込む)」なども使われているようだ。
英語では受け身で使う動詞、「be confused」などを日本語になじみやすく自動詞風に転じて「コンフューズする(混乱する)」という言葉にして取り入れているケースもあった。「be disappointed」が「ディサポイントする(がっかりする)」となるのも、同様である。
他動詞の「finalise」を「ファイナライズする(完成させる、終了させる)」として、「~する」を使いながら「~させる」という意味合いを持たせている言葉もあった。
英語では動名詞となる「~ing」を使った「モーイングする(mowing、芝刈り)」なども、オーストラリアの日常生活に欠かせない言葉の1つとして取り入れられているようだ。
プロフィル
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS)