長期にわたり豪州不動産販売のアドバイスやサポートを手掛けるGIM Capital Professional Pty Ltdが豪州不動産市場の動向や情報を分かりやすく解説。
コロナ禍からの脱却と共に大きく不動産価格が上昇してしまったオーストラリア。2022年の後半は法定金利の上昇予測報道を起因として購買者が敬遠しました。一時的に市場は冷え込みを見せましたが、昨年3月からの急激な海外からの移民流入により予想外の事態も起こっています。今回はそういった内容にフォーカスし、2023年後半の豪州不動産状況を含め解説します。
予想外の需要急増と家賃の値上がり
昨年後半から購買者数が停滞すると共に、賃貸物件の空室率が1%を下回るようになりました。コロナ禍のリモートでの自宅勤務ビジネスが盛んになったことで、郊外の不動産価格、特に一軒家と土地価格が高騰しましたが、ビジネスが正常化し、都心に勤務者が戻ってくるにつれ、一旦は家賃が下がった都心の賃貸物件に希望者があふれ、借りるのが難しいくらいの需要増となっています。同時に家賃は全豪で週77ドルの値上がりとなっていますが、実際には週150ドル、300ドル、中には450ドルの家賃の値上がりもあり、現在の物価高を含め、家計を直撃している地域や住宅形態もあるようです。
オーストラリアの最大都市にメルボルンが台頭!
オーストラリアの人口が最も多い都市が、ついにメルボルンになったと4月17日に報道されました。2032年または35年と予測されていたため、一般予想よりも8年も早い到達です。その理由としては、大学の費用を支払っていたにも関わらず、コロナ禍で帰国を余儀なくさせられた留学生が一斉に戻ってきたこともあり、人口のバランスが急に変わりました。メルボルンは都心に多くの大学があるために人口増加に結び付いたという分析が最も説得力のある内容となっています。
人口増加及び法定金利と豪州不動産の関係性
人口増加と豪州不動産は緊密な関係性にあります。人が増えれば需要が増し、需要が供給を押し上げるほどの切迫した状況になると、どうしても家賃は上がりがちになります。それを通り超えると、不動産の価格は上がってしまいます。法定金利は、上がりすぎると融資希望者が少なくなるなど、自宅や投資物件の売却につながると言われていますが、前号で説明した通り、豪州の歴史を見ると、現在は破格に高い率であるとも言えません。報道は心理面で民衆を揺さぶるため、購入者がしている場合もあり得るでしょう。この状況が更なる空室不足を促進してしまいます。
しかし、自宅や投資物件を売却することにつながるかというとむしろ自宅は自分たちが住むために、そして投資物件は以前とは比べ物にならないくらい家賃が上がっていて手放す理由がないという方が現実的であると言えます。23年3月の不動産価格の各都市の比較を見ると、下降傾向にあった市場を牽引しがちなシドニーの市場価格が、ここに来て需要の底上げから上昇傾向に転じているのが分かります。今後の状況を言及するのは難しいですが、現実的には「土地」「不動産」「主に木材と鉄材などの建築部材」「キッチンや浴室内などの海外からの輸入部材」「人件費」の高騰などから人びとの心理が高まらずとも、法定金利の値上がりで物件価格が下がるとは言いにくい現状です。
風評と豪州不動産
マスメディアの報道がいつも正しいかというと、歴史をひも解くならば、違う記憶を持たれている方々も多いようです。例えば、2000年のオリンピックが終わった後にシドニーの不動産は暴落する、豪州は好景気だが日本のバブル崩壊のような大暴落がすぐに来る。実際に起こったことよりも、想像のみで客観性がない「風評」が人びとの間で都市伝説のように信じられることがあるようです。
しかし、現実はいつも実際に起こっている事象に左右され、理にかなっています。ご自身の人生にとって何を優先すべきことなのか、家族にとって自身にとって住まいがどんなに大切で、快適な暮らしをするための安心できる住居や収入の確保が肝要であることはどんな時代、事情であっても変わりありません。読者の皆様が賢い選択をすることを願って止みません。不動産の選択は信頼できる専門家の意見を参考に慎重に厳選しましょう。
「住まいの大切さ」と不動産動向
では、自宅として豪州不動産を購入するのは「いつ」が最適なのでしょうか?
それは、ご自身の準備が整い次第、そして融資の確実性などが関係していきます。下記の表にある通り、少し低めの価格になっている地域の物件、もしくはスポット的に抑え目の価格になっている物件など、家族にとって自分自身にとって最適な暮らしが実現できる物件が手に入るならば、底値と思われている今の時期に手に入れておくのも懸命な方法です。オーストラリアは、移民から成り立っている国で、政府が発表した「新移民65万人にビザを発給する」という対策においても今後人口増加が見込まれています。
自身の安全な生活を実現するために、オーストラリアでは人口が増え競争が激しくなる前の方が比較的望ましいのではないかと思います。キャピタルゲイン(物件価格)とインカムゲイン(家賃価格)の両方が下落気味の日本と比較すると耐久性ある不動産で将来の価値が、物件そして家賃相場が上がっていくオーストラリアは「信じられない」との声も聞こえますが、収入が増えつつある現実に照らし合わせますと、どうしても暮らしの質や不動産価格の上昇も否めないのが現状です。
●Domainによるハウス・プライス・レポート(2023年3月)
都市 | 2023年3月 | 2022年12月 | 2022年3月 |
シドニー | $1,459,856 | $1,441,554 | $1,594,192 |
メルボルン | $1,023,116 | $1,028,133 | $1,091,033 |
ブリスベン | $805,818 | $806,802 | $847,374 |
アデレード | $795,364 | $792,474 | $753,409 |
キャンベラ | $1,047,112 | $1,073,9611 | $1,142,900 |
このコラムの著者
鶴美枝
グローバル・インテリジェンス・マネージメント代表。創業2010年以来、豪州各地の優良不動産を厳選し、豪州及び日本在住のホーム・オーナー若しくは投資家の方々の購入をサポートし資産増幅、理想の住まいの確保に日々尽力中。日本と豪州にて法学部大学院卒業。豪州不動産フルライセンス保持