春から始まった花のリレー、梅、桜、藤に続いて躑躅(つつじ)でゴールが見え始め、紫陽花でフィナーレですね。他にもたくさんの美しい花々は存在しますが、日本で花見と称されて、大勢の観光客が足を運んで鑑賞したいと思う花は、梅雨時期に瑞々しさを増し、ひと時の蒸し暑さを忘れさせてくれる、艶やかな紫陽花で締めくくられるように思います。
雨上がりが特に美しい紫陽花の花は、日本原産であることはご存じでしょうか。昔々の日本ではあまり人気がなかった花のようですが、昨今では著しい品種改良がなされて魅力あふれるものが店頭を彩っています。
英語名で「Hydrangea」と呼ばれ、「水の容器」という意味を含んだ、みずものと特に縁の深いこの花は、水揚げをしっかりとしなければ、すぐに萎(しお)れてしまいます。花いけに使う場合には、特に気を配ってあげないと、見栄えの悪い花となってしまうので注意が必要です。
わが家の慣習の1つとして、毎年6月の6が付く日に紫陽花を逆さまに吊るして1年間の無病息災を願っています。植物には紫陽花に限らずあらゆるエピソードを持ち合わせています。同じ花でも国が変われば言い伝えられていることもさまざまで、各国の文化的な背景に影響されていることも多く、とても学びの深いものです。植物が育ち、花が咲くことは強く生きる力を彷彿とさせ、私たちにその息吹を感じさせてくれます。
今月の花は、光沢のある椿の葉をマッス(塊)に見立て、紫陽花やアリウムの花の丸さと合わせています。大中小の塊にはリズムがあり、写真だと平面的になりがちな作品からも、音楽を聴いているかのような、軽快な感触を得ることができると思います。
雨水が葉や萼片(がくへん)に当たる音は、まるで協奏曲を聴いているかのような音の集合体で、耳に心地良く目にも麗しく感じられます。
花と共に音楽が聞こえてくるような、心が弾むいけばなをご覧頂けたらと思います。
このコラムの著者
Yoshimi
いけばな作家
Web: https://www.7elements.me/