「先ず隗より始めよ」という有名な故事成語があるが、我が家の大事もカイ(カイト)より始まった。
【月曜】カイト発熱。登園断念。自宅で仕事をしながらカイトを見ることに。
【火曜】BBK(僕)、カイトの病気うつる。朝から目眩と悪寒で仕事を休む。熱のあるカイトを見ながら過ごすも夜、堪らず布団に倒れ込む。
【水曜】ベッドから起き上がれず。38〜39度の間を推移。カイトはカイ復。
【木曜】熱下がらず終日寝込む。妻が39度の熱。
【金曜】自身は37度台まで熱下がる。しかしアリサ発熱39度。自宅で仕事をしながらアリサを見る。
前回コラムで僕自身の初コロナ感染について書いたが、まさかのふた月連続で病に倒れることになった。今回は家族全員が巻き込まれ我が家はカオス状態。そして熱でうなされる中、それでも僕は本コラムのネタにしようと、下記の文章をスマホに打ち込んでいた。必死で書いた当時の自分がかわいそうなので荼毘に付さず掲載してみる。
内臓のどこかがよく分からぬがところどころがキリキリと痛い。とにかく全体的に痛い。内臓たちと話ができたらな、と思う。脳は各臓器と会話をしていて、その受け取った状態を鑑み、痛みというシグナルを出しているのだろう。けれども、当のアクションを起こされる僕自身の本体が事態を把握できないのはいったいどうしたことか。だって分からなければ解決できないではないか。だから僕はそれぞれの内臓と直接話をして状況を聞きたいのだ。事態を把握し生存率を上げるために、脳を含めた人体の機能はもう一歩先に進む余地があるのではないか。そこまで考え、だがきっとそれはもしかしたらそう遠くない未来にテクノロジーが先に実現するのかもしれないと思った。家庭用ボディースキャナーが普及し、気になる箇所に当てると自動スキャン、3Dに統合されたデータをAIの医師が仮診断するというようなシステムだ。僕ごときが思い至ることなのだからこれはきっと実現可能性が高いことにちがいない。
朦朧とした意識で書いたものではあるが、確かに自分の体の中で起きていることなのに当の本人が分からないというのはいささかもどかしい。38度台の熱が上がったり下がったりを繰り返し、熱が下がっている時は意識が多少はっきりとしている分、体の痛みやつらさとしっかり向き合えてしまうのが逆にきつかった。コロナの時のように意識を失っている方がよっぽど楽だった。
咳をするたび胸のあたりに激痛が走り、痰には血が混じり(血痰)、視界が霞んで見える状態が続くなど(霧視)、初めての症状も多く、かなり不安になった。そこで今回「海外でも日本の医療」をスローガンに、海外在住者、旅行者向けにオンライン医療相談サービスを提供している「YOKUMIRU」(Web: https://yokumiru.jp/)のサービスを利用してみることに。アメリカでの経験も豊富で、海外の状況に詳しい男性医師と30分ほど話をする機会を得たのだが、その際皆様にも興味がありそうな話を聞けたので今回はそれを紹介しようと思う(僕自身の病状については公益性がないので省く)。
「お薬」協奏曲
熱や痛みが出たら「とりあえずパナドール」。オーストラリアに住んでいる人なら誰でも知っている合言葉だ。ただ、パナドールは商品名の1つで実際はスーパーや薬局に売っているジェネリック医薬品を服用している人も多いだろう。値段も遥かに安く、成分表示は見たところ同じなので僕はいつも1箱70セント程度の一番安いものを購入しているが、どうもこの「安い薬」が今回全然効かなかった気がしてならないのだ。スタッフにその話をすると「BBKさんの場合、最悪の時期に安い薬を服用して効きが悪く、回復の時期にパナドールやニュロフェンを使ったため、効き目が分かりやすかったのでは」との意見。また以前、喉の痛みで救急病院に駆け込んだ時に「パナドールとニュロフェンを同時服用しろ」と言われ、一発で治ったことがあるのだが、同スタッフには「同時服用はダメ」と言われてしまった。というわけで、普段から気になっていたこれらの話を医師にぶつけてみた次第。以下、やり取りを掲載する。
──パナドール(成分名:パラセタモール)とニュロフェン(成分名:イブプロフェン)、どちらも解熱や痛み止めの効果がありますがどう使い分ければ良いのでしょう。
「まず、パラセタモールの方がマイルド、イブプロフェンの方が強めに効くというのが違いですね。ですから6歳以下の子どもの場合にはパラセタモールを使います。また、イブプロフェンには炎症を抑える働きがあり、これはパラセタモールにはありません。抗炎症作用があるので喉の痛みが強いなど炎症の症状が前面に出ている場合はイブプロフェンの方が症状の改善にはより良いと思います。症状が強めの場合はイブプロフェン、炎症の関係ない発熱の場合はパラセタモールという使い分けで良いかと思います」
──以前、パラセタモールとイブプロフェンをダブルで服用することを勧められました。
「両方処方するというのは日本ではないやり方です。例がないので善悪は分かりませんが、両方飲むのであればイブプロフェンだけで良いかと私は思います」
──同じ成分で値段が違う薬がたくさんありますが違いは何なのでしょう。
「基本的には特許料というか、ブランド料と思えば良いでしょう。オーストラリアに限らずアメリカでも昔からある有名な薬が高めで、薬局のオリジナルブランドだとその1/3の値段で売っているというようなケースはよくあります。ブランドで売っている会社は値段を維持したいので、早く効きやすくするために薬のカプセルの包み方を工夫するなど、化学薬品以外のところで付加価値を付けています。イブプロフェンの場合は胃が荒れやすいので胃酸を抑える薬が一緒に配合されるなどといった付加価値もあるでしょう」
──ブランド力、付加価値の付け方が異なり、成分や効き目は同じという理解で合っていますか。
「合っています。ただ、極端に安い場合には例えば発展途上国で作った薬の成分を輸入していたりする可能性もあるので、安全性の問題が浮上するかもしれません。高めの薬の方が安心、安全はある程度保証されるとは思いますが、製薬会社が原料をどこで仕入れているかは医者もなかなか知り得ません。結局は同じ仕入れ元かもしれませんし。重要なのは国がどのくらい安全性に配慮しているかだと思います。先進国で認可されている薬であれば基本的に問題ないと思いますが、発展途上国で薬を買う場合は信頼できるブランドを選んだ方が良いというのが私の個人的意見です」
専門家によっても意見が異なるケースはあるとのことなので、また機会があれば別の医師にも話を聞いてみたいと思うが、しっかり30分聞きたいことを聞ける機会など病院ではなかなか得られない体験。勉強になった。いずれにせよ2カ月連続の病はかなり堪えた。皆様もくれぐれも体調管理にはお気を付けを。
このコラムの著者
馬場一哉(BBK)
雑誌編集、ウェブ編集などの経歴を経て2011年来豪。14年1月から「Nichigo Press」編集長に。21年9月、同メディア・新運営会社「Nichigo Press Media Group」代表取締役社長に就任。バスケ、スキー、サーフィン、筋子を愛し、常にネタ探しに奔走する根っからの編集記者(だったが、現在は会社経営に追われている)。趣味ダイエット、特技リバウンド。料理、読書、晩酌好きのじじい気質。二児の父
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