Text&Photo by Taka Uematsu
ブリスベンCBD マイヤー・センター
「アメリカンな響きでしっくりこない」。ブリスベン中心部の商業施設の新名称に対して、そんな声が聞こえてきたのも当然だった。7月31日、メイン・テナントのマイヤーの退去をもって、これまでブリスベン市民に長く親しまれてきた「マイヤー・センター」の名称が消えた。
ブリスベン・シティのにぎわいの象徴的な建物として愛されてきた「マイヤー・センター」は、かつては、その名と共にブリスベンに暮らす人びとの誰もが知るランドマークだっただけに、さすがに「アップタウン」は…。
シティ中心部の周辺地域の開発がどんどん進み行く中で、建物自体の老朽化や深刻な客足離れの影響もあって、必ずしもかつてのような存在感を発揮できずにいた「マイヤー・センター」にトドメを刺したのが、今年3 月に発表された中核テナントの百貨店マイヤーの撤退のニュースだった。
マイヤー閉店の知らせは大きな驚きをもって迎えられ、7月末の閉店セールには、名残を惜しむ人だけでな く野次馬、バーゲン・ハンターなど多くの人びとが殺到。最終日前日は、長く勤めた店員が「皮肉だけど今日が今までで一番忙しいよ」と複雑な表情で語ったように、店内は大にぎわい。陳列の品物も相当数が売れて、かなり空っぽになっていた。
名残惜しさと物欲がないまぜの心持ちで臨んだ小生だったが、人生最大の掘り出し物、元値から98%引きの15ドルで、某有名ブランドのジャケットを手に入れた時に、ノスタルジーは一気に霧散した。
それでも、大昔、日豪プレスの営業でいつも使用した地下駐車場の甲高く響く独特な床のスリップ音を耳にした瞬間、一気に懐かしさと「マイヤー・センター」の名前への名残惜しさが込み上げてきた。こうやって、どんどん街は変わっていくんだ。