Text & Photo: Taka Uematsu
ブリスベンCBD イーグル・ストリート・ピア
10月に大幅値上げするJRレールパスの駆け込み購入のため在留届が必要になり、総領事館に行くためシティに。何かにかこつけてシティに行きたくなるのはいつもの変わらぬ性(さが)だ。
対岸のカンガルー・ポイントからの渡し船を降りると、微かな地響きと共にトン、トンと甲高い音が聞こえてきた。聞き覚えがあるその音は、ビルの建設現場でよく耳にする鉄骨を地面に打ち込むあの音だ。総領事館が入るビルに近付くにつれ音が大きくなっていく。ビルの谷間を抜け、よりクリアに聞こえてくる方向を見やって驚いた。
「あ、イーグル・ストリート・ピアがない」。
領事館の入ったビルの前には、当コラムで既出のイーグル・ストリート・ピアという、ブリスベンのリバー・サイドの象徴的存在である商業施設があった。ひと頃は、ブリスベンのちょっとした高級スポットとして知られ、高級レストランが軒を連ねていた。
そんなイーグル・ストリート・ピアも2011年の甚大な洪水被害でけちが付き、他の新しいスポットに人びとの関心が移ろう中、その存在感を大いに低下させていた。そこで、起死回生をねらって20億豪ドル(1,900億円)もの巨費を投じて一大再開発が行われているというわけだ。
ブリスベンのリバー・サイドの象徴を生まれ変わらせる大事業の槌音(つちおと)が聞こえてくる先に広がる景色は、これまでの見慣れた景色とは一変していたが、川面のきらめきが近隣のビルに跳ね返ってまぶしかった。
街は生き物。どんどん変わっていく。ブリスベンのように急成長を遂げる都市では、街中の至る所が現在進行形で変化している。なんせブリスベン、今やオリンピック・シティですから。