サリスベリーの戦没者メモリアル
鮮やかな赤いポピーが夕陽の下で咲き誇るこの壁画。以前、当連載でアンザック・デーに触れ、「豪に入れば、豪に従え」といったようなことを書いた時に取り上げた場所と同じく近所の戦没者メモリアルにある。
毎年11月11日は、リメンバランス・デー。文字通り、忘れてはならない記憶としての第1次大戦の終戦記念日であり、その参戦国のほとんどでは105年が経った今でも毎年、戦陣に散った将兵に祈りを捧げる追悼の日だ。この日が近付くと、いろいろな所で赤いポピーを目にするようになる。
赤いポピーは、かつて欧州の戦場で戦闘後の荒野で最初に咲いたため、戦没者の象徴として扱われるようになったが、その象徴として存在が確立したのは、同大戦に従軍したカナダの詩人ジョン・マクレーの「フランダースの野に」という詩に詠まれたことによるそうだ。写真の壁画の横にも、マクレーの詩の一節がパネルに飾られている。
第1次世界大戦では、日豪両国が友邦として共に戦った。かのアンザック兵団をガリポリに送り届けたのは、帝国海軍の巡洋艦「伊吹」が警護する護送船団だった事実なども含めて、正直、在豪邦人にはあまり知られていないのが現実。ある知り合いの邦人女性が、11月11日にポピーを胸元に挿した同僚に「その花飾り奇麗ね」と言って笑われたと話していたが、正直、聞いているこちらも失笑を禁じえなかった。
知らないなら知る努力が必要なのは当たり前。アンザック・デーの時と同じ締めくくりになってしまうのは少々ぞんざいな気がするが、あえてもう1度書く。
豪に入れば、豪に従え。そう心掛けていれば、まず間違いはない。
植松久隆(タカ植松)
文・写真 タカ植松(植松久隆)
ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人