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「一切皆苦(いっさいかいく)」─現実をありのままに受け止める/福島先生の人生日々勉強

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 「一切皆苦」という言葉があります。読んで字のごとく、この世の一切は苦であるという意味です。文字面だけを見ると何だか救いようのないネガティブな考え方のように思えますね。

 人は現実を生きる中で快・不快を感じます。そして、快を増やし、不快を減らすために日々の活動を行っています。しかし、世界は人間の快・不快とは関係なく変化し、流れていきます。意識的に快の方向へと変化を起こすことはできても、あくまでも限定的で、全て思い通りになることはありません。

 結局、人は快・不快を感じ、その度に一喜一憂しながら日々を送っています。できれば自分の意のままに全てをうまく運びたいと思っても、決して本質的に思い通りにならない、この現実を「一切皆苦」と言うのです。

 老いたくなくても老いていく、病気になりたくなくても病気になる、死にたくなくても死んでしまう、「老病死」は思い通りにならないことの代表です。あらがって努力して少しでも避けたいものを遠ざけることは決して悪いことではありませんが、思い通りにならない現実は、思い通りにならない現実としてそのまま受け止めましょう。ただし、無理をして受け入れようとしないこと。受け入れがたい事態に陥った時、無理に全てを受け入れようとすると壊れてしまいます。そういう時は、現実を受け入れられない自分も含めてただ受け止めることです。



 「受け入れなければならない」と思うのは、現実を受け入れられない自分を否定している状態です。受け入れられない自分も含めて「現実」。人は自分の理想や考えていたこと、思っていたことと違うことが起きると大きな衝撃を受けます。そしてその脅威から逃げることで衝撃から身を守ろうとします。しかし、現実から逃げていると、意識・無意識にかかわらず、「現実から逃げている自分はダメな人間だ」と責め続け、不安やストレスが増える一方となり、前向きに生きることが困難になってしまいます。最初の1歩としては、現実に向き合うことに苦しんでいる自分をありのまま認めることです。

 努力も改革も必要なことであり、そこに価値もあるでしょう。しかし、何か失策と思われることがあったとしても、その結果が果たして未来の一時代において不幸となるかどうかは分かりません。逆も然りです。俯瞰(ふかん)すれば、日々の失敗も微細な変化に過ぎません。「一切皆苦」は真理であり救いです。思い通りにいかなくて当たり前。悩むより寝てしまいましょう。睡眠は何にも勝る良薬、これもまた1つの真理です。

このコラムの著者

教育専門家 福島 摂子

教育専門家 福島 摂子

教育相談及び、海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命とした私塾『福島塾』を開き、シドニーを中心に指導を行う。2005年より拠点を日本へ移し、広く国内外の教育指導を行い、オーストラリア在住者への情報提供やカウンセリング指導も継続中

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