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新しい扉を開いてー能楽師の舞をイメージした躍動感あふれるいけばな/花のある生活 – flower in life – 第55回

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鏡板に描かれた一本松の枝と、花を咲かせながら冬を越す琵琶の枝を一体化させています。また、能楽師の舞をイメージして躍動感あふれる作品に仕上げています

 恭賀新年、明けましておめでとうございます。本年も引き続き「花のある生活」のコラムを担当させて頂く多田玲秋(Tada Reishu)です。日豪プレスオンライン版には英語に翻訳された「Flower in Life」のコラムも掲載されるようになりました。本誌コラム同様、ご愛読のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 世界最古の舞台芸術の原型と言われる「能楽」は、700年の時を経て今もなお、途切れることなく脈々と伝承されています。日本の重要無形文化財であり、2008年にユネスコ世界文化遺産として登録されました。現代のエンターテイメントや演劇などの舞台芸術に例えると、「能」は歌や舞、音楽や語りがあるため、オペラやミュージカルの原型とも言えるのではないでしょうか。

 同じ時代に生まれたいけばなも、高い樹木や大きな石に神が降りてくるという信仰があり、神事の際に常緑樹などを高く掲げて神を招く習慣から発展していった説が有力で、お正月の門松飾りもその1つです。

 「いけばな」と明確に示すことができる「立花」が発展した室町時代は、能にいけばな、茶道の他にも、絵画、建築、庭園などが大いに発達し、日本の美が大きく展開するきっかけとなりました。

 時代が変わり、現代を生きる私たちは、定形化された芸能を、額縁内の演劇や床の間の芸術だけにしておくのはどうかと思っています。ライブハウスで感じられる臨場感や、形式を超越した創造性を凝らすことによって新しい価値が生まれていくように思います。

 新春の晴れやかな正月花は、西宮能楽堂に奉納させて頂きました。能舞台は神様が君臨するとされている神聖な場所です。新年を迎え新たな門出を祈願し、日本の誇る文化芸術が世界に向けて伝承されますよう願いを込めて、新春花をいけさせて頂きました。金と朱の扇が互いに美しく、優美な芸術を生み出しています。

 2024年も皆様におかれまして、健やかなる日々と、世界が安穏であることをお祈り致します。

このコラムの著者

多田玲秋(Tada Reishu)

いけばな作家
Web: https://www.7elements.me/

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