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出稼ぎワーホリの実態/オーストラリア“ファーム・ジョブ”のリアル③

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 少し前に、盛んに「オーストラリアのワーホリで、簡単に稼げる」という内容が取り上げられ、日本のメディアやSNSで見聞きしたことがある人が多いかと思います。私も何度かテレビで見ました。実際、ファームの求人を出すと「出稼ぎに来ました」「稼ぎたいです」という人が多いです。今回は、オーストラリア在住18年、ファーム経営10年目の私が、雇う側の意見を皆様にお伝えしたいと思います。

出稼ぎワーホリは本当に稼げるのか?

 出稼ぎワーホリでも、スキルのあるアシスタント・ナースや、建設業などのトレイディー・ジョブは、稼げるかもしれません。ファームにおいては、結論から言うと、「不可能ではないけれど、簡単ではない」と言ったところでしょうか。実際に、出稼ぎワーホリで、オーストラリアに来たところで、仕事もアコモデーションもありません。助けて下さいと、何度か電話をもらったことがあります。出稼ぎワーホリで「英語力なし、スキルなし、車なし」となれば、ファームに行こうと思う人が多いと思います。可能なら3年オーストラリアにいて、たくさん貯金をしたいし、ファーム・ジョブで、ビザを延長したい考える人も多いでしょう。

 そもそも稼げるという定義が、いくらかは分かりませんが、ファームのカジュアルの時給は28,26ドルからなので、40時間働けば、週に約1,000ドルです。日本に比べて、物価の高いオーストラリアでは出費もある程度多くなるかもしれません。オーバー・タイムが付けばもっと稼げます。そういう仕事はあると思います。しかし、天候に左右される農業です。また、現在オーストラリアに入国する人が急増して、仕事は争奪戦です。「英語力なし、スキルなし、車なし」では、なかなか仕事に就けなかったりします。まずは、仕事を獲得する、それが果たして毎日仕事できるのか、悪徳ファームではないか、いろいろな難関が待ち受けているかもしれません。

出稼ぎワーホリは悪いこと?

 そもそも出稼ぎをする、お金を稼ぐことが悪いみたいにいう人もいますが、私はお金を稼ぐことが悪いとは思いません。ただ、簡単ではないから、きちんと準備をして、オーストラリアに来て欲しいと思います。ある程度の貯金も必要ですし、英語力もあれば、なおさら良いでしょう。

 本来、ワーホリ制度というのは、勉強ができる上、働けて国際交流ができるという、若者の経験のためにあります。出稼ぎのビザではないのです。とはいえ、稼いでも良いとは思います。それも経験ですから。ただ、簡単に稼げるのだったら、私はファームを売ってピッキングに行きます。オーストラリアにホームレスはいないだろうし、そもそもオージーが働くと思います。そこの意味を良く考えて欲しいです。

海外で働くということ

 私のオーストラリアでの前職は、ビューティシャンでした。ネイルをしたり、脱毛をしたりしていました。ローカルのビューティー・サロンで働いていましたが、オーストラリア人と同じ土俵に上がるというということが、どれだけ難しいか思い知らされました。まずは英語という言語の壁。ネイティブには勝てないし、文化も違います。私がオージーに勝てるのは、スキルだけでした。日本のように、終身雇用なんてないし、いつでも、クビになるシビアな世界です。それは、ファームの仕事だけでなく、結果を出さなければならないということ。初めから、即戦力でなければ、いつでもクビにされます。

 日本のように会社が人材を育ててくれるという会社は少ないと思います。特にファームの仕事は、シーズナルジョブで、極端な話、1日だけ働いて欲しいという日雇いのような仕事があり、1週間、2週間だけの仕事も多く存在するので、人材を育てている時間がありません。そして、ファーム・ハンドと呼ばれる仕事は、基本的にカジュアル・ジョブというポジションです。雇用者はいつ辞めても良いし、雇い主はいつクビにしても良いというポジションなので、不安定です。ファームの仕事は運もあるし、天候にも左右され、いつでもクビにされるリスクがあります。そういう意味でも「簡単に稼げる」と、日本のメディアで安易に言わないで欲しいと感じています。

 最後に、私個人として若い人たちに伝えたいことを書きます。お金はいくつになっても稼げます。しかし、時間はいくらあっても買えません。今という貴重な時間を、若者だけができるワーホリという貴重な数年を、出稼ぎだけでなく大切な人生の1ページになるように、今だけしかできないことに費やしてみて下さいね。

Profile

松﨑絢子

葡萄ファームズ及びBudou Exportの経営者。オーストラリアVIC州で、生食用ぶどうを生産し、日本を中心とするアジアに輸出している。日本では大手スーパーマーケットで販売中。共同通信グループNNAオーストラリア発行の農業専門誌「ウェルス」で、「南半球でブドウを作る VIC州農園ダイアリー」も連載中。一児の母。
Facebook: www.facebook.com/budoufarms/
Instagram: www.instagram.com/budoufarms/





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