オーストラリアのマッコーリー辞書が選ぶ2023年の言葉が発表された。2023年の言葉として選ばれたのは「cozzie lives (コジー・リブズ)」。これは生活コストという意味の「cost of living(コスト・オブ・リビング)」をスラング化したもの。近年の物価の上昇を受けて、豪州での生活に掛かる費用は年々上昇する一方だ。そんなネガティブな状況をスラング化して皮肉ることで、深刻さを和らげるような表現として使われている。
一方、同社が募集した一般の投票によって選ばれたのは、生成AIを意味する「generative AI(ジェネレイティブ・エーアイ)」だった。昨年は、人工知能にコマンドを与えることで文章や絵画、写真を生成するサービスが加速度的に一般の人びとへ浸透した年だった。
他には、昨年の災害を反映して、豪雨のあった日から数日経って標高の低い地域へ水が到達し、青空の下で洪水の災害が起こる「blue-sky flood(ブルースカイ・フラッド)」、そしてSNS上などでの使用禁止ワードのアルゴリズムをすり抜けるための言い換え「algospeak(アルゴスピーク)」が選ばれた。
イギリスのオックスフォード辞書は、2023年の言葉として「rizz(リズ)」を選んでいる。これは、豪州でも最終候補に挙がった言葉の1つで、特にZ世代(90年代後半から2000年代前半まで生まれ)の若者を中心にTikTokなどで頻繁に使われた言葉だ。「charisma(カリスマ)」を短縮したのがこの「rizz」であり、モテたり誘惑するための魅力のことを指す。
アメリカでは、メリアム・ウェブスター辞書が2023年の言葉として「authentic(オーセンティック)」を選んだ。本物、正真正銘のもの、信頼できる、といった意味を持つこの言葉が昨年の言葉として選ばれた背景には、人工知能AIが生成する画像やAIチャットのテキストなどの影響がある。また、フェイク・ニュース、ディープ・フェイクと呼ばれる誰かを偽って作られた動画などの偽情報や誤情報があふれる世の中で、本人の言葉で説明された実際の発言や、本当の情報、そして何かに秀でている一流の人物、本物の存在がこれまで以上に必要とされてきているようである。
プロフィル
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS)