エコノミストは労働党のワクチン報奨金案を支持
8月3日付シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH、電子版)は、エコノミストの分析として、国内のコロナウイルス・エピデミックが経済に及ぼす影響を紹介している。
大学研究者とエコノミストらの新しいモデル化分析として、「9人が2回の接種を受ければ1人の雇用が守られる。接種報奨金でワクチン接種を奨励することで何千人もの雇用が守られる可能性もある」としている。
デロイット・アクセス・エコノミクス社の分析で、大シドニー地域のロックダウンが1週間延長されるごとに1万人を超える雇用が失われることもあり得るため、研究者やエコノミストは、アンソニー・アルバネージ連邦労働党党首の、「接種に$300の報奨金支給を」と発言し、スコット・モリソン連邦首相が一笑に付したできごとで報奨金案を支持している。
この接種報奨金制度はアメリカでは既に実施されており、まったくの絵空事ではない。
デロイット社のクリス・リチャードソン氏は、「接種率を押し上げることが最重要課題だ。12月1日までに完全接種を実現するために報奨金で経済的インセンティブを与えることもいい考えだ。労働党の考えは、接種の場合、アメとムチのうち、アメを使うケースだということだ。ただし、対投資効果を考えた場合、今後2,3週間の間に接種を迅速化することと、アストラゼネカ・ワクチンがどこにあるかということをよく考えなければならない。また、アメで誘導した後、最後まで接種に抵抗する人達に対してはムチを使って処罰で対応する必要も出てくる。民主主義社会ではその使い分けは難しい。しかし、デルタ株は非常に感染力が強く、個人が接種を受けないと考えることは他のすべての人に大きなマイナスの結果をもたらすことになる。社会全体の権利が一時的に個人の権利より優先しなければならない」と分析している。
また、AMPキャピタルのシェーン・オリバー・チーフ・エコノミストも、「報奨金や宝くじで接種へのインセンティブを高めることも一案だ。接種率が上がれば雇用も守られる。私の試算では、ロックダウンによる経済活動の損失は140億ドルにものぼっている。費用便益で考えても、接種報奨金制度で何百万ドルまたは10億ドルの予算を使っても、それでロックダウンを防げるなら十分な便益があると考えられる。しかし、報奨金制度を使うなら、できるだけ急いで採用すべきだ。その後、どうしてもワクチンをいやがる人達に対してはその自由を制限し、強制するムチを利用することになる」と分析している。
また、QLD工科大学のスティーブン・ホワイト行動経済学ポスドク研究員は、「接種報奨金制度はもっと早くから導入していなければならない優れたアイデアだ。接種をためらう人は低社会経済階層でより高い率を占めるが、現金で奨励するというのは非常に効果がある」と分析している。
■ソース
Analysis shows one job saved for every nine people vaccinated as economists back cash incentives