穀物肥育牛肉の輸出量は史上最高 中国向け急増

オーストラリア食肉家畜生産者事業団(MLA)は8日、4月の同国産牛肉の輸出量は12万7,172トンと前の年の同じ月と比べて21%伸び、同月としては最高を記録したと発表した。いわゆる「トランプ関税」の発動にもかかわらず、北米市場が好調だった。米国向けは前年同月比37%増の3万7,213トンと、カナダ向けも40%増の3,222トンを輸出した。
このうち、穀物肥育牛肉(グレインフェッド・ビーフ)の輸出量は27%増の3万7,030トンと月間で史上最高を記録した。穀物肥育牛とは、放牧場で草を食べさせて育てた牧草飼育牛を一定期間、肥育場(フィードロット)で穀物を食べさせた後に出荷する牛の肉。一般的に牧草飼育牛肉はさっぱりした赤身が主体で、穀物肥育牛肉は日本人が好む霜降りが多く含まれる。
MLAによると、オーストラリア産穀物飼育牛肉の中国向け輸出は近年、急増している。中国は2024年末、同牛肉の最大の輸出先となった。4月の同牛肉の中国向け輸出量は1万2,151トンと62%増を記録した。同牛肉の需要が大きい有力市場の日本への輸出量は8%増の9,918トン、韓国向けは46%増の6,882トンだった。
生産量拡大が輸出増につながる
米国は4月5日、オーストラリア産品にも一律10%の関税を導入した。しかし、少なくとも現時点ではオーストラリア産牛肉の輸出は、米国向け、中国向けともにむしろ絶好調だ。
中国向けの急増をめぐっては、報復関税で米国産牛肉の対中輸出が止まったことによって、オーストラリアが「漁夫の利」を得たと見ることもできる。ただ、専門家によると、トランプ関税の影響だと考えるのは時期尚早だという。MLAのティム・ジャクソン分析官は公共放送ABC(電子版)に次のように述べ、単に供給の拡大が輸出増に結びついたとの見方を示した。
「オーストラリア産牛肉の生産と輸出は昨年、史上最高を記録したが、今年も記録を更新する勢いだ。飼育頭数は多く、屠殺頭数、枝肉重量(胴体部分のみの重さ)ともに一貫して増加している。そのため、牛肉生産量が伸びており、海外向けの供給も増えているのだ」
■ソース
Global demand for grainfed beef climbs(Meat & Livestock Australia)
Australian beef surges into China and United States during trade war(ABC News)