給料が上がりすぎたら困るのはなぜ? オーストラリア法定賃金、7月改訂

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財界は2.5%以下、労組は最大4.5%の賃上げ求める

 オーストラリア連邦政府は、公正労働委員会(FWC)が7月1日に改訂する法定賃金をインフレより早いペースで引き上げるよう要望した。これに対し、財界の代表は公正労働委員会(FWC)に引き上げ幅を最大で2.5%に抑えるよう求めている。

 公共放送ABC(電子版)によると、オーストラリア商工会議所(ACCI)のアンドリュー・マッケラー代表は「これ以上の賃上げは、特に小売業や接客業などの脆弱な小規模事業者に大打撃を与えることになる」と人件費の高騰が事業者の経営を圧迫すると主張。物価上昇を大幅に上回る賃上げには慎重な姿勢を示した。

 一方、労働組合の頂上組織「オーストラリア労働組合評議会」(ACTU)は、最大4.5%の法定賃金引き上げを要求。労使の主張は大きく食い違っている。

 給与生活者にとって賃金は高ければ高いほどうれしいのは当然だ。しかし、行き過ぎた賃上げは、賃金上昇と物価上昇の悪循環が止まらない「賃金インフレ・スパイラル」をもたらす。物価上昇が賃金上昇を上回る状態が続けば、給与水準や貯蓄が実質的に目減りして国民から富を奪い、景気後退を引き起こしかねない。公定賃金の引き上げは、物価を見極めながら慎重に進める必要がある。

 産業・職種別労使協定「アウォード」の賃金や全国統一の法定最低賃金は、FWCが物価や景気の動向を踏まえて毎年改訂し、オーストラリアの会計年度が始まる7月1日に施行している。

 FWCは今年度(24年7月1日〜25年6月30日)、これらの賃金を3.75%引き上げた。最低賃金は時給24.10豪ドル(約2,250円)、週給915.90豪ドル(約8万5,500円)としていた。引き上げ幅を決めた昨年6月時点で、直近の同年3月末の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比3.6%だった。これを少し上回る水準で法定賃金を引き上げていた。

■ソース

Backing a wage rise for low‑paid workers(The Hon Dr Jim Chalmers MP, Treasurer)

Federal government backs ‘economically sustainable’ real wage increase(ABC News)

Annual Wage Review 2023-2024 Announcement of Decision(Fair Work Commission)

DECISION, Annual Wage Review 2023–24(Fair Work Commission)

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