動物愛護の観点から ナイキやプーマに追従

独スポーツシューズメーカー大手のアディダスが、カンガルー皮革を使ったサッカーシューズの生産を停止する。オーストラリアの公共放送ABC(電子版)によると、アディダスの代表が15日、ドイツで開いた年次総会で表明した。同社は昨年8月からすでにカンガルー革の仕入れを停止していたという。
カンガルー革は軽量で耐久性が高いため、特にサッカーシューズの素材として重用されてきた。アルゼンチンのディエゴ・マラドーナ、ブラジルのペレといった世界の伝説的サッカー選手も愛用していたという。
しかし、カンガルー駆除に強く反対する動物愛護団体が、靴の素材に使用しないようメーカーに働きかけていた。こうした声を背景に、世界の大手メーカーのうち、プーマやナイキ、ニューバランスは2023年にカンガルー革の使用を止め、合成繊維素材に置き換えている。
カンガルーはオーストラリアの国章やカンタス航空のロゴにも使用されていて、コアラと並んで国を代表する固有動物だ。ところが、農業生産者にとっては作物や農地を荒らす「害獣」でもある。一般的な種は絶滅が心配されているわけではなく、生息数は豊富だ。このため、州政府が決めた一定の頭数内で、ハンターが銃で撃って間引きしている。一般的に需要が高いわけではないが、肉は食用に、革はなめして革製品に利用されている。
ただ、カンガルーのメスは「育児嚢」(いくじのう)と呼ばれる腹の袋に妖獣を入れて育てているため、親が撃たれると子どもが餓死してしまうこともあり、動物愛護団体などが「人道に反する!」などと主張している。
ABCによると、米国の動物愛護団体「センター・フォー・ヒューメイン・エコノミー」のウェイン・パセル代表は「アディダスの離脱によって、我々は世界の運動靴メーカー大手5社にカンガルー革利用を止めさせた」と述べた。今後は、日本のシューズメーカー大手のアシックスとミズノを運動のターゲットにするという。
一方、カンガルーの狩猟や革のなめし作業は、遠隔地の先住民の産業や雇用を支えている側面がある。スポーツシューズ用の需要が減少したところで、間引きの必要性がなくなるわけではないため、肉を利用した後に革が捨てられるだけだとの見方もある。
■ソース
Adidas ends use of kangaroo leather in its soccer boots(ABC News)