ガソリン価格は上昇もインフレ圧力は限定的か

イスラエルが13日、戦闘機による空爆、ドローン、巡航ミサイルなどでイランの核燃料濃縮施設や軍事基地などを攻撃した。イランもドローンや巡航ミサイルでイスラエル領内に報復攻撃を仕掛けている。中東の新たな火種は、オーストラリアの経済や暮らしにどんな影響を与えるのか?
攻撃直後の13日午前、外国為替市場ではリスク資産とされる豪ドルが売られ、数時間のうちに対米ドルで約1%下落した。国際商品市場では、指標となるブレント原油の先物価格が1バレル74.23米ドルと13%急騰した。1日の下げ幅としては、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降で最大を記録した。
公共放送ABCのギャレス・ハッチェンス記者は15日、同電子版の記事で次のように考察している。
専門家によると、原油先物価格の高騰により、オーストラリア国内のガソリン価格は1リットル当たり12豪セント前後、上昇する可能性がある。ただ、イランが攻撃目標をイスラエル国内だけではなく、地域の米軍基地や敵対国の石油施設などに拡大し、最悪の場合、ホルムズ海峡の封鎖まで突き進めば、原油の供給や価格に与える打撃は甚大となる。
紛争が短期間で縮小した場合、原油価格は1バレル70米ドル以下の水準に下落しそうだが、激化した場合、100米ドル近辺まで上昇する可能性もある。
ABCによると、世界全体の原油消費量の約20%、液化天然ガス(LNG)貿易量の約25%がホルムズ海峡を通過している。紛争の行く末次第では、地球規模のエネルギー供給に深刻な影響を与える可能性がある。
22年のロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギー価格を押し上げ、オーストラリアをはじめとする世界各国に激しい物価高騰をもたらした。今回のイスラエルとイランの紛争は、オーストラリアのインフレを再燃させるのか?
ハッチェンス記者によると、エコノミストの多くはガソリン価格の一時的な上昇はあっても、紛争が長期化しない限り、インフレ圧力を増大させる可能性は大きくないと予測している。その場合、中央銀行(RBA)の緩和トーンはしばらく持続しそうだ。
ウェストパック銀のルーシー・エリス首席エコノミストも、現時点では「(イスラエル・イラン紛争がオーストラリアの)金融政策に影響を与えることはなさそうだ」として今後の利下げシナリオを変えていない。エリス氏によると、RBAは政策金利(現行3.85%)を26年上半期までに最低2.85%まで引き下げる見通しだ。この見立てが正しければ、RBAは0.25ポイントずつの利下げを今後約1年間に4回実施することになる。
■ソース
What will the Israel-Iran missile attacks mean for Australia’s economy?(ABC News)