ドイツ銀行エコノミスト分析
長引く不動産不況に苦しむ中国政府がこのほど発表した景気刺激策。この影響で鉄鉱石の指標価格が上昇すれば、オーストラリアの資源輸出企業が儲かって連邦政府の税収も増え、国富が拡大することになりそうだ。そんな専門家の予測を公共放送ABC(電子版)が紹介している。
オーストラリア産鉄鉱石は生産量、埋蔵量ともに世界最大で世界貿易量の56%(連邦産業科学資源省)を占める。特に中国向け鉄鉱石輸出額は1,156億豪ドル(約11.7兆円=2023年)と国・地域別で最も多く、2位の日本向け(80億豪ドル)と比べても桁違いに多い。
それだけに、鉄鉱石の指標価格がオーストラリア経済に与えるインパクトは莫大だ。ABCによると、直近6回の中国の景気刺激策と鉄鉱石価格の相関性について、ドイツ銀行オーストラリアのフィル・オドノヒュー首席エコノミストは次のように分析している。
「鉄鉱石はオーストラリア最大の輸出商品であり、中国は鉄鉱石の最大の輸入国。歴史を振り返ると、鉄鉱石価格は中国が景気刺激策を発表した後に上昇する傾向が強い。中国の国内総生産(GDP)に占める景気刺激策の規模が1%に達すると、翌年の鉄鉱石価格は平均3.5%上昇している」
ドイツ銀行の予測によると、中国政府が数週間前に発表した今回の景気刺激策の規模は、GDPの6%程度となる見通しだ。これを上記の方程式に当てはめると「現在1トン当たり106米ドルの鉄鉱石スポット価格は、2025年に平均130米ドルに上昇する」(オドノヒュー氏)と考えられる。
その場合、オーストラリアの輸出収入は急増し、連邦政府の税収は予測より上振れして財政収支は改善する。オドノヒュー氏は「2024-25年度に3年連続の単年度黒字を達成するのは難しそうだが、予算案が予測している283億豪ドル(GDPの1%)の赤字幅が縮小する可能性は大いにありそうだ」との見通しを示している。