10月18日〜11月4日まで開催された「スカルプチャー・バイ・ザ・シー・ボンダイ」。同イベントは、毎年10月下旬から3週間にわたって行われ、約50万人の人びとが訪れるという世界最大級の野外彫刻展だ。ボンダイ・ビーチからタマラマ・ビーチにかけて約2キロに及ぶ海岸沿いの遊歩道に、オーストラリアをはじめ世界中のアーティストの作品が100点以上並ぶ。日本人アーティストの作品も複数展示され、今回はその中でも初出展となった布藤喜帆さんに話しを伺った。
(文・インタビュー=櫻木恵理)
プロフィール
藤布喜帆◎滋賀県出身。2023年に京都精華大学大学院芸術研究科立体造形領域を修了。「第29回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」に出展するなど、精力的に活動している
――今回出展された作品に込められた思いや注目ポイントを教えてください。
この「Warmth」という作品は、愛情やつながりをテーマにした大理石の彫刻で、大小の手の平が重なり、寄り添うような形をイメージしています。心地よいカーブを意識して作りました。
――スカルプチャー・バイ・ザ・シーに参加し、海を背景にした作品展示を行うにあたり感じることはありましたか。
これまでも屋外の作品設置は何度か経験しましたが、こんなにも1日の間で作品の表情が変わることは初めてでした。天候と時間帯によって海と空がさまざまな色彩に変化し、作品が力強く見えたり穏やかに見えたり、いろいろな表情を見ることができました。
現地の人たちにとって毎年このイベントで新しい彫刻が展示されることは当たり前なのかもしれませんが、彫刻と人びとの日常がごく自然に共存している環境は、とてもすてきだと思います。
――今後の展望をお聞かせください。
人びとの生活や日常の中に自分の作品があることを目指しています。これからも彫刻作品の制作を通して、さまざまな出会いや経験を重ねていきたいです。
晴れた日に見た布藤さんの丸みを帯びた優しい雰囲気の作品は、タマラマ・ビーチを背景にキラキラと白さを強調するように輝いていた。実際にイベントに足を運び、この作品を目にした人は多いのではないだろうか。彼女の言葉の通り、その日の天気や時間で作品の表情が変わるのは、同イベントの面白さだろう。