169。とてつもない数字だ。そんな現時点での歴代1位のキャップ数という金字塔を打ち立てて、豪州女子フットボール界のレジェンドがブーツを脱いだ。
クレア・ポーキンホーン(35歳)。“Polks”のニックネームで知られる彼女は、2006年の代表デビュー以来、18年間の長きにわたって豪州女子代表マチルダスの屋台骨を支えてきた。ここ数年は、ディフェンスの要として君臨するセンターバックのレギュラー・ポジションを失ってはいたが、ここぞと言う時の存在感はまだまだ特筆すべきものがあった。
4年と長かったトニー・グスタフソン体制が終わり、現在のマチルダスの暫定的に指揮するのは、こちらも05年から12年まで足掛け7年監督を務めた老将トム・セルマーニ(70歳)。今のマチルダスのベテランには、第1次セルマーニ体制かその直後に代表デビューを果たした選手が未だにチームの主力として活躍している。そのことは、キャップ数100を超える選手がズラリと並ぶことにも顕著に現れている。ポーキンホーンは、まさにその典型とも言える選手だが、まさか18年前に自分を代表に引き上げた元監督が復帰して、その目前で代表引退をすることになるとは思ってもいなかっただろう。そんなポーキンホーンの代表引退は、マチルダスの一時代の終わりを象徴している。
11月28日、故郷ブリスベンのブラジル戦で、多くの地元のファンやピッチ上の選手に拍手で送り出されたのが最後の試合となると思いきや、恩師に請われて10日後の台湾戦にも駆り出された。その試合の63分の交代時に再び、万雷の拍手に送られたポーキンホーンは6−0という圧勝を見届けてから、長いキャリアからの引退の花道を飾った。
今後は、今季まで現役として4年プレーしたスウェーデンでコーチとしてのキャリアを歩み始める彼女には、近い将来に指導者として豪州に戻り、その豊かな経験を次の世代に還元して、“Polks2世”となる堅牢(けんろう)なディフェンダーを育成してもらいたい。
ブリスベンで彼女が最初にプレーしたクラブであるウィンナム・ウルブズは、彼女の名前を冠したすばらしい設備を誇るクラブ・ハウスを建設することが決まっている。そう遠くない将来、自らのフットボール・キャリアの原点でもあるクラブを指揮するポーキンホーンの姿を見られる日が来るかもしれない。レジェンドが故郷に錦を飾る姿、見てみたいものだ。
お疲れ様、Polks。まずは、ゆっくり休んで、19年もの長きにわたって現役を続けた体を労って欲しい。
植松久隆(タカ植松)
ライター、コラムニスト。タカの呟き「今季のJリーグが終った。豪州絡みでは、サポーターに愛されたミッチ・ランゲラクが惜しまれつつ名古屋を退団。ピーター・クラモフスキー(FC東京)、ジョン・ハッチンソン(横浜FM)の2人のオージー監督はいずれも退任。寂しくなる。来季に向けて新たなオージー参戦があるか、続報を待とう」