オーストラリアで生活するパートナーと共に永住権を目指す方々にとって、パートナー・ビザは非常に重要なビザの1つです。今回は、内務省が4月に発表した最新のパートナー・ビザ処理ガイドラインの内容を詳しく解説し、申請者・スポンサー双方が今すぐ対応すべき点を整理します。
1. パートナー・ビザとは:基本的な仕組み
同ビザは、オーストラリア市民権者・永住権者・または特定のニュージーランド市民権者のパートナー(配偶者またはデファクト・パートナー)として、オーストラリアに滞在するためのビザです。審査は2段階制を採用しており、まず一時ビザが発給され、申請から約2年後に永住ビザの審査が始まります。
・国内申請(サブクラス820→801):オーストラリア国内に滞在中の申請者が対象。申請後にブリッジング・ビザAが発給され、就労・就学・メディケアが利用可能
・国外申請(サブクラス309→100):オーストラリア国外にいる申請者が対象。309ビザが発給されるまでは国外での待機が原則
・婚約者ビザ(サブクラス300):未婚の場合は婚約者ビザでオーストラリアに入国し、入国から9カ月以内に婚姻手続きを経て820/801へ移行するルート
(現時点では)申請料はいずれも約9,365豪ドル(主申請者)が一括徴収され、永住ビザへの移行にあたって追加費用は発生しません。ただし、健康診断・犯罪歴証明・翻訳費用・専門家報酬などを含めると、総額1万2,000〜1万5,000豪ドル以上になるケースが多く、却下された場合でも申請料は返金されません。
ビザ申請審査期間について
2026年3月時点での平均審査期間は約17カ月です。また、申請の約90%が処理されるまでの期間は23〜24カ月に及ぶ場合もあります。一時ビザから永住ビザの取得までを含めると3〜5年が掛かることも珍しくありません。
| ビザ・サブクラス | 一般的な処理期間 | 90%ライン目安 |
| 820(国内・一時) | 12〜20カ月 | 最大約23カ月 |
| 309(国外・一時) | 12〜20カ月 | 最大約24カ月 |
| 801/100(永住段階) | 申請から約2年後に審査開始 | 個別の状況による |
2. 2026年4月の新ガイドライン:何が変わったのか
(i)情報提供の機会は「原則1回のみ!」
今回の発表で最も注目すべき変更点は、追加情報請求(Request for Information:RFI)や自然的公正(Natural Justice)通知への回答機会が「原則1回のみ」となったことです。
これまでは、不十分な書類を後から補完する機会がある程度認められていましたが、今後は内務省からのRFI通知が「最初で最後のチャンス」として位置付けられます。フォローアップ通知は原則として発行されません。
そのため、回答期限が過ぎた場合で期限延長の申請がなければ、内務省はその時点で手元にある情報のみを元にビザの可否を判断します。つまり、「知らなかった」「準備が間に合わなかった」という理由は通用しません。回答期限の延長が必要な場合は、期限内に理由を付して延長申請することが必要です。
(ii)申請時点での「完全な証拠」の提出が義務化
内務省の内部審査の結果、多くの申請が「交際が真剣かつ継続中であること」を示す証拠が不十分または古いという問題があることが明らかになりました。
今後は、証拠書類は申請時点でそろっていることが前提となります。「後で追加する」という従来の慣行は通用しなくなります。証拠は関係性の4つの柱(財産・住居・社会的側面・相互コミットメント)をきちんと網羅する必要があります。
(iii)「ImmiAccount」が「唯一の正式連絡手段」
内務省はImmiAccountを正式かつ優先される連絡手段と明確に位置付けました。パートナー・ビザのメール・ボックスへのメール送信は、迅速な対応が期待できない上、限定的な状況でしか返信されません。
また、ウェブ・フォームとメールを同時に使用すること(2重送信)は処理をむしろ遅延させると明記されています。提出する書類ファイルは明確なファイル名を付け、正確なカテゴリーに振り分けて登録することが求められます。
(iv)永住段階における海外犯罪歴証明書の要件が明確化
永住段階(サブクラス801・100)への移行にあたり、以下の通り海外犯罪歴証明書(Police Certificate)の要件が改めて明確化されました。
・過去10年間に合計12カ月以上滞在した国(未提出のもの)について、海外犯罪歴証明書の提出が必要
・一時パートナー・ビザ(309・820)の発給後に当該国に累計12カ月以上滞在した場合は、新たな証明書が必要
・身元照会上の懸念(Character Concern)がある場合は、滞在期間にかかわらず新たな証明書が必須
ビザ申請上、犯罪歴証明書は発行日から12カ月有効とされており、有効期限切れの犯罪歴証明書は審査遅延となる原因の1つです。海外犯罪歴証書は申請する国によって発行されるまでに時間が掛かることがあるため、内務省から催促が来るのを待つのではなく、永住段階審査の開始前に自ら準備を完了させておくことが重要です。
(v)長期審査中の証拠は定期的に更新が必要
審査が長期間に渡る場合、申請者及び代理人は証拠書類を積極的に更新・維持することが求められます。内務省は、関係性の証拠を6〜12カ月ごとに更新することを推奨しており、具体的には以下の書類の更新が想定されます。
・銀行口座の共同利用記録・財務書類
・共同の住所・賃貸契約書・光熱費
・2人で参加した社会的イベントや旅行の写真
・状況が変化した場合の個人陳述書(Statutory Declaration)の更新
3. 申請者がすぐに取るべきアクション
A. 申請前の準備チェック・リスト
・関係性の4つの柱(財産・住居・社会・コミットメント)に対応する最新かつ充実した証拠を申請時に全てそろえる
・出生証明書・パスポートの認証コピーを準備する
・ImmiAccountの書類ファイル名・カテゴリーを正確に設定する
・スポンサー情報に不備や欠落がないことを確認する
・健康診断・犯罪歴証明書は、内務省のビザ処理期間ガイドを参照した上で適切なタイミングで手配する
B. 申請中の対応チェック・リスト
・ImmiAccountを定期的に確認し、連絡・通知を見逃さない
・RFI(追加情報請求)や自然的公正通知が届いた場合は、期限内に全力で対応する(これが「最後のチャンス」)
・回答期限の延長が必要な場合は、期限内に理由を添えて延長申請する
・関係性の証拠を6〜12カ月ごとに更新し、ImmiAccountにアップロードする
・関係状況に変化があった場合は、速やかに内務省へ報告する
・申請から2年が経過したタイミングで、ImmiAccountから永住段階の情報を提出する(通知を待たず自発的に)
4. スポンサーの義務:継続的な責任を忘れずに
パートナー・ビザにおけるスポンサーとは、申請者の身元を保証するオーストラリア市民権者・永住権者のことです。スポンサーとしての役割は、申請書類に署名して終わりではありません。以下の義務が継続的に課されています。
・ImmiAccount上の個人情報・連絡先情報を常に最新の状態に保つ(更新を怠ると永住段階の通知が届かないリスクがある)
・関係状況に変化があった場合は速やかに内務省へ通知する(別居・関係解消などを含む)
・内務省から書類の提出を求められた場合は速やかに対応する
・家庭内暴力や児童虐待に関連する犯罪歴がある場合、スポンサー適格性に影響する可能性がある
5. 今回の変更が示す、より大きな流れ
今回発表された4月ガイドラインは、単なる手続き上の注意喚起ではなく、内務省がパートナー・ビザの審査において書類の質とコンプライアンスに対する姿勢を根本的に強化していることを示しています。
「証拠不足の申請を提出してRFI後に補完する」という従来の慣行は、今後は通用しません。申請は最初から完成した状態で提出することが唯一の安全な方法です。9,365豪ドル以上の申請料が返金されないことを踏まえると、専門家によるサポートは「コスト」ではなく「リスク管理」と考えるべきでしょう。ご不明な点がある人は、申請前に早めに専門家にご相談ください。
アドバイザー

清水 英樹
オーストラリアQLD州弁護士。在豪30年以上。地元大学卒業後、弁護士資格を取得。フェニックス・グループCEOとして傘下にあたる「フェニックス法律事務所」、ビザ移民コンサルティング「Goオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故ならびに労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営
