世代間の資産移転
人びとの興味を最も引く資産の1つに不動産が挙げられます。そして、今後20年間で、オーストラリア史上最大規模の世代間の資産移転が起こるという予測がされています。推定3.5兆ドルもの資産がベビーブーマー世代やジェネレーションXから、子どもや孫世代へと移るのです。その多くは不動産に関連しており、スムーズかつ法的に安全な移転を実現するために、弁護士とファイナンシャル・プランナーの役割が今後ますます重要になっていくと考えられます。
なぜ今、親世代が早めの贈与をしているのか
現在オーストラリアでは、不動産価格の高騰により多くの若者が住宅市場に参入することが難しくなっています。これを受けて、親世代が「早めの贈与」に踏み出すケースが増えています。具体的には、住宅購入の頭金を援助したり、不動産の名義を移転したり、家族資産の構成を見直したりして、若い世代を支援しています。
注意すべき法律と税務の落とし穴
オーストラリアには「贈与税」並びに「相続税」はありませんが、不動産や株式の移転はキャピタル・ゲイン税(CGT)や印紙税を課される可能性があります。更に、いわゆる年金(Superannuation)を扶養していない成人の子に残す場合、30%以上の税金が課されることもあります。こうした複雑さからも、早めの計画と専門家のアドバイスが不可欠となります。
専門家の役割
この資産移行手続きの中心にいるのが弁護士です。家族間の非公開取引、不動産贈与の記録化による争いの回避、年金や社会保障への影響を踏まえた手続きなど、慎重な対応が求められます。安易に進めると、将来的な争い、予期せぬ税負担、または意図しない経済的リスクにつながる可能性があります。そういった問題を事前に避ける、または最小限に食い止めるためにも弁護士を中心として計画を立てることが重要となります。
家族にとっての重要ポイント
・早めに計画を立てること:明確な遺産・資産計画は、資産を意図した通りに移転させ、税負担を最小限に抑えます。
・贈与を文書化すること:書面を残すことで、将来の離婚や相続争いを防げます。
・専門家のアドバイスを受けること:ファイナンシャル・プランナー、弁護士、会計士が連携することで、贈与者と受贈者双方を守ります。
結論は明らかです。早期に計画的な資産移転を始めるほど、次世代へのメリットはより大きくなります。多くの家族にとって、最も価値ある遺産はお金や不動産そのものではなく、未来を守るためのしっかりとした安心のプランなのです。
アドバイザー

清水 英樹
オーストラリアQLD州弁護士。在豪30年以上。地元大学卒業後、弁護士資格を取得。フェニックス・グループCEOとして傘下にあたる「フェニックス法律事務所」、ビザ移民コンサルティング「Goオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故ならびに労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営
