家族で使える市販の痛み止めガイド:成分の違いと上手な選び方/知って安心!オーストラリアの薬事情②

SHARE

市販で買える一般的な痛み止め

 最近ではスーパーでも簡単に買えるようになった「痛み止め」。しかし、種類もメーカーもたくさんあって、「どれを選べばいいの?」という声をよく耳にします。特に小さなお子さんを持つ親御さんにとっては、予防接種後の発熱や、学校やスポーツでのケガなど、痛み止めを使う場面も多いですよね。今回は、家族みんなが安心して使える市販の痛み止めについて、オーストラリアの薬局事情とあわせて紹介します。

スーパーで買える痛み止めと薬局で買う時のポイント

 スーパーでもよく見掛ける痛み止めですが、購入できるのは基本的に少量パックで、種類も限られていますそのため、いつも使っている薬の補充や軽い症状の時などにはスーパーでの購入でもOK。ただし、新しい薬を試したい時や、いつもと違う痛みのときは、薬剤師のいる薬局で相談しながら選ぶのがおすすめです。

 また、市販薬の中には同じ成分を含む商品が複数存在する点にも注意が必要です。特にパラセタモール(paracetamol)は風邪薬や花粉症薬にも含まれていることがあり、知らずに重複して飲んでしまうケースも。購入前には成分表示を確認し、分からないときは薬剤師に相談しましょう。

痛み止めの種類と特徴

 オーストラリアで手に入る市販の痛み止めは主に次の2種類です。

•パラセタモール(Paracetamol)

頭痛・発熱・生理痛などの一般的な痛みに幅広く使える。

•非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

 炎症を伴う痛み(筋肉痛・関節痛・打撲など)に効果的。代表的な成分はイブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、ダイクロフェナク(diclofenac)など。アスピリン(Aspirin)は以前は痛み止めとして使われていましたが、現在は血液をサラサラにする薬として処方されることが多いです。胃への刺激が強く、子どもや10代では重篤な副作用(ライ症候群)の恐れがあるため、医師の指示がない限り使用は避けましょう。

 下記、オーストラリアでよく使われる市販の痛み止めを、特徴や注意点ごとにまとめました。ご自身やご家族に合った薬を選ぶ際の参考にしてください。

成分 / Product主な商品名向いている症状注意点使える年齢特徴
パラセタモール / Paracetamol Panadol®、Dymadon® など頭痛・発熱・生理痛・筋肉痛・予防接種後の発熱や痛み止めなど肝臓疾患・飲酒習慣がある人は注意。生後1カ月頃から(製品により異なる)胃に優しい。子どもにも安全性が高い。
イブプロフェン / Ibuprofen Nurofen® など炎症性の痛み(筋肉痛・関節痛・生理痛・予防接種後の痛み止めなど)胃への負担あり。食後に服用。妊娠中は不可。生後3カ月以降(製品により異なる)炎症や腫れを抑える。発熱にも有効。
パラセタモール+イブプロフェン配合 / Paracetamol + IbuprofenMaxigesic®、Nuromol® など強い痛み(頭痛・生理痛・歯痛など)、単独で効かない時他のパラセタモール/イブプロフェン製品と併用不可。12歳以上2つの成分が相乗的に効く。短期間の使用がおすすめ。
ナプロキセン / NaproxenNaprogesic®など生理痛、炎症を伴う痛み胃への負担あり。長期使用は避ける。12歳以上効果が長持ち(1日2回)。生理痛に効果的。
ダイクロフェナク / DiclofenacVoltaren®など筋肉痛、腰痛、関節痛、スポーツ後の炎症胃への負担あり(内服)。塗り薬は安全。内服14歳以上、塗り薬12歳以上局所の痛みにピンポイントで効く塗り薬が人気。

子どもが使える痛み止めのポイント

 小児用の痛み止めは、大人と同じ成分でも濃度・用量・剤形(形の種類)が異なります。代表的なのはParacetamolとIbuprofenの2種類。どちらも熱や痛みに使えますが、選び方と使い方に注意が必要です。

 Paracetamolは生後1カ月頃から使え、発熱や軽い痛みに適しています。胃にやさしく、空腹時でも服用できます。Ibuprofenは3カ月以降に使用でき、炎症を伴う痛みに効果的ですが、極度の脱水時の使用は注意が必要です。

 製剤もさまざまで、シロップ、チュアブル(噛むタイプ)、坐薬などがあります。シロップは濃度が商品によって異なるため、同じメーカーでも用量が違う場合があります。必ず説明書を確認し、不明な点は薬剤師に相談しましょう。

 また、子どもの薬は年齢ではなく体重で投与量を決めるのが原則です。例えば「同じ4歳でも体重が違えば量も異なる」ため、誤って多く与えると過剰摂取につながります。オーストラリアの子ども用シロップには、カップやスポイトではなく注射器型の計量器(oral syringe)が付属しているものが多く、慣れていないと量を間違えやすいので注意が必要です。

 飲ませにくい場合は、生後6カ月頃から使用できるparacetamol坐薬も選択肢の1つ。眠っている時や発熱で水分摂取が難しい場合にも便利です。また、3歳以降であればparacetamolのチュアブル、7歳以降ではibuprofenのチュアブルも使用可能です。小児は好みの味でないと嘔吐してしまう場合があるので、子どもの年齢や好みに合わせて無理なくあげられる薬を選びましょう。

こんな時はGP(かかりつけ医)へ
1. 痛み止めを飲んでも痛みが治まらない
2. 頭痛と一緒に、めまい・しびれなど他の症状がある
3. 痛み止めを連日または長期間使用している
4. いつもと違う、または激しい頭痛がある

最後に

 市販の痛み止めは、正しく選び・正しく使うことで安全に役立つ身近な薬です。オーストラリアでは薬局の薬剤師がとても頼りになる存在。迷ったときは自己判断せず、気軽に相談してみてくださいね。

Profile

鐵池めぐみ(カナイケメグミ)
薬剤師。シドニー大学薬学部卒業後、オーストラリア薬剤師国家資格を取得。シドニー及び南オーストラリア州の大学病院で、がん治療を中心とした臨床薬学に20年以上従事。現在は、がん治療の研究に携わる傍ら、薬局を拠点に英語と日本語で薬の相談や服薬支援を行っている。
Email: megkanaike@gmail.com





SHARE
健康・美容の最新記事
関連記事一覧
Google Adsense