
オーストラリア東海岸を縦断する同国初の高速鉄道建設が、従来の構想段階から計画案のフェーズへとやっと進み始めた。ただ、連邦政府が2年後をめどに着工を検討するニューカッスル・シドニー間は、全体構想の1割にも満たない。史上最大級の国家プロジェクトとなる全ルート開業は、仮に実現したとしても今世紀後半と見られ、まさに「国家百年の計」となりそうだ。それでも、高い安全性と高頻度の定時運航で優れた新幹線技術を誇る日本勢にとっては、ビジネスチャンスとなり得る。日豪両国が経済・安保で連携を深める中で、その行方が注目される。(文・構成:守屋太郎)
ポイント
・まずニューカッスル・シドニー間で高速鉄道建設の検討を加速
・2年後の着工を視野に、コストや実現可能性を精査する
・最高速度時速320キロでシドニー中央駅まで1時間
オーストラリア連邦政府は24日、北東部ブリスベンから東部シドニー、首都キャンベラ、南東部メルボルンを高速鉄道で結ぶ全体構想のうち、東部の工業都市ニューカッスルとシドニー間の「ステージ1」について「開発フェーズ」に移行したと発表した。高速鉄道建設にかかる投資対効果検討書(ビジネスケース)も公表し、2年後の着工も視野に入れる。
連邦政府は今後2年間かけて、ステージ1のルート選定や線路設計、認可手順、建設コストなど詳細を詰め、実現の可能性を精査する。
現時点で予算化しているのは総額6億5,960万豪ドル(約723億円)。今回、2億3,000万豪ドルを追加で投じることを決めた。
最終的な建設コストの総額や財源は未定だが、民間からも投資を募る方向で検討する。
来年開港の西シドニー空港まで検討
検討書によると、ニューカッスルとシドニー中央駅間の約160キロを「ステージ1A」、「ステージ1B」と設定。ニューカッスル南方レイク・マッコーリー、シドニー北方セントラルコーストのゴスフォードに中間駅を設ける。シドニー中央駅から西郊パラマタを経由し、2027年開港予定の西シドニー空港に至る約30キロのステージ1Cも、合わせて検討する。
計画案では、ニューカッスル・西シドニー空港間約194キロに専用線を建設する。このうち半分以上の115キロでトンネルを掘削する。市街地に線路建設が困難なシドニー周辺や、環境規制が厳しい国立公園内では、ほぼ全線を地下化する。
1編成の全長は約200メートルを想定している。具体的な導入車両に関する記述はないが、仮に16両編成で全長約400メートルの東海道新幹線N700S系が採用された場合、8両編成になると予想される。
ニューカッスルはシドニー通勤圏に
最高速度は地上部分で時速320キロ、トンネル部分で同200キロを想定している。所要時間は、州営鉄道で現在、2時間40分かかっているニューカッスル・シドニー間が1時間に、1時間20分かかっているゴスフォード・シドニー間が30分にそれぞれ大幅に短縮される。
ニューカッスル・西シドニー空港間の所要時間は1時間30分を見込んでいる。西シドニー空港は開港時、市内中心部から直通の鉄道がない。30分で直接アクセスできるようになれば、利便性も一気に向上する。
運航頻度は、ピークで1時間6本(10分おき)、オフピークで1時間3本(20分おき)を想定している。
建設が正式に決まった場合、着工は28年ごろとなる。開業時期は、ステージ1Aが約10年後の36年ごろ、1Bが39年ごろ、1Cが41年ごろを予定している。
「オーストラリア版新幹線、実現へ一歩前進だね! ②高速鉄道建設の狙いとは? 国内屈指の巨大メトロポリス形成へ」に続く
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