日本で唯一、そば打ちが必修科目! 北海道幌加内高校の生徒がタスマニア産のそば粉でそば打ちを体験─シドニーの手打ちそば処「新ばし」で

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左から幌加内高校の南さん、大橋さん、Jugemu & Shinbashiの東條さん、そばの坂本・工場長の西村さん

 日本有数のそばの産地として知られる北海道・幌加内町。この町のそば文化をこれから担っていく幌加内高校の大橋虎士朗さん、南和磨さん、幌加内町にあるそばの坂本・工場長の西村光大さんの3人が、シドニーで20年以上そば打ちに励む東條正彦さんが営む「Jugemu & Shinbashi」を訪れた。海を越えて出会ったそばの打ち手たちは、何を感じたのだろうか。
(取材:髙橋悠來=日豪プレス・インターン)

真剣に東條さんの話に耳を傾ける高校生たち

幌加内町のそば文化を担う若者たち

 今回の訪問は、幌加内町によって実現したもので、高校での募集や町から直接声を掛けられた3人が集まった。大橋さんは海外就職に関心があり、高校の先生から推薦があったと言う。南さんは高校のそば局で精力的に活動しており、日頃からそば打ちに熱心に取り組む姿勢が、高校の先生の目に留まり、今回の訪問につながったのではと話す。西村さんは、幌加内のそば文化継承に尽力している貴重な若手人材として今回の訪問に参加した。

Jugemu & Shinbashiとはどんな店?

 Jugemu & Shinbashiはシドニーに店を構える日本食レストランである。おすすめは鴨せいろ、牡蠣のみぞれせいろなど。加えて、お好み焼き、鉄板焼きも提供している。日本人のみならず、国籍豊かな客層が店を訪れる。日本人のお客さんが1人もいない日もあるそうだ。食文化が日本と比較的近しいアジア系の人のみならず、西洋系の人の姿も多く、中には毎日のように訪れる人もいたと言う。

「三たて」にこだわったタスマニア産のそば

 同店のそばの魅力は、タスマニア産のそば粉を使用している点に加え、挽きたて・打ちたて・茹でたての「三たて」を実現している点だ。店内の厨房で電動石臼を使用し、そばの香り、食感を生かすことを大切にしている。

創業者の意志を継ぐ店主の東條さん

 店主の東條さんは、もともと海外就職を希望しており、「自分でやるなら飲食業」と決意し、開業に至った。タスマニアのそば粉を使ってオーストラリアでそばその物、そば打ちを広めたいという創業者の意志を継ぎ、シドニーでそば打ちを学んだ後、店を切り盛りしている。海外で日本食を提供することで感じるやりがいについて、東條さんは、「お客さんに喜んでもらえて、またそのお客さんが来てくれるのが一番ですね」と話す。

そば打ちの工程で重要視される「水回し」の様子

水の量が違う!? 視察での気づき

 視察では、実際に高校生がそば打ちを体験した。その中で感じた違いとして、南さんは、「普段打っている粉より少し粉が粗く感じました。水回しという工程でそば粉に水を加えるのですが、その加水率が幌加内町では45パーセントを目安にしています。しかし、今回は50パーセントと聞き、幌加内町よりも水分が多いことが分かりました」と話す。

実際に打ったそばの味は!?

 4人で協力して作ったそばについて、西村さんは、「コシ・風味・甘味共に北海道と近いものを感じました。次に機会があればそば畑と共にタスマニアの新そばも味わってみたいです」と話す。

 大橋さんは、「タスマニアのそばは香りが良く、ほんのりした甘みがあり、日本で食べるそばと遜色ないおいしさでした」と絶賛。

 南さんも、「北海道のそばと似ているなと思いました。想像していたより風味が似ていて驚きました」とその完成度を評価した。

海を越える日本のそば文化

 視察を終えて西村さんは、「オーストラリアで手打ちそばは、この店にしかないと聞き、現地での知名度は低いと聞いていました。それでも東條さんは20年以上店を続けているので、もっとそばを広めたいと感じました」と話す。さらに、「北海道のそばも海外で通用するのではないかと思いました」と期待を寄せた。

 幌加内高校でそば粉を使い、そばではないものを作る活動に取り組んでいる大橋さんは、「日本で、そば粉を使用してフィナンシェを作ったのですが、そば粉を使っているという物珍しさで購入する人が多かったです。しかし、オーストラリアに来て、グルテンフリーがとても一般的なものだと知りました。帰国後は、自分が作っている物にもグルテンフリー表記を取り入れ、海外に向けた発信もしていきたいです」と今後の活動にも意欲を示した。

 南さんは、「オーストラリアに来て、日本食人気を目の当たりにしました。まだ知名度はないですが、幌加内町のそばをここで広めることができたら、地域に貢献できるだけでなく、幌加内町や幌加内高校とオーストラリアのつながりも増えると思うので、将来的に関われたらいいなと思います」と将来を見据えていた。

 東條さんは今回訪れた3人について、「本当にすばらしくて、私も勉強させてもらいました」と話す。シドニーで交わった日本のそば文化。今回の視察は、それぞれの視野と可能性を広げる機会になったに違いない。

プレーンのそばとエビの天ぷら

こだわりのそばを実食!

 取材に訪れた際、シンプルでそば本来の風味を味わえるプレーン($17)を実食させて頂いた。細めの美しい麺は、香りが良くコシの強さが感じられる。一緒頂いたエビの天ぷら(2本で$16)も、サクサクの衣と大きくプリッとしたエビが合わさって絶品だった。シドニーにいながらも、本格的なそばを味わうことができた。

取材を終えて

 今回の取材を通して、そばという日本の食文化が人と人を結びつけるきっかけになり得ること学んだ。今回の視察は、海外でそばを広めようと尽力している東條さんと、幌加内町のそば文化を継承している3人が互いに良い刺激を受ける、有意義な時間であった。異なる土地で育まれた経験や価値観が交わることで、新たな視点や可能性が生まれる。今回の視察をきっかけとして、幌加内町のそばが世界に広まっていくことを願っている。
(髙橋悠來)

Jugemu & Shinbashi

住所:246 Military Rd., Neutral Bay NSW 2089
営業時間:月休、火〜木6PM〜9PM、金〜土5:30PM〜9:30PM、日5:30PM〜9PM
Tel:02 9904-3011
Email:hello@jugemushimbashi.com.au
Facebook @jugemushimbashi
Instagram@jugemushimbashi

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