シドニーのスタジアム・オーストラリアで21日に行われたサッカーのAFC女子アジアカップ決勝。日本代表「なでしこジャパン」が開催国オーストラリア代表「マチルダズ」を1-0で破り、3度目の栄冠に輝いた。一方、マチルダズは幾度もの好機を生かせなかった。両チームの戦いぶりと今後の展望について、オーストラリア在住のフットボール・ジャーナリストで、本誌コラムニストのタカ植松氏に聞いた。
Q:特に後半はなでしこが圧倒的に攻め込まれていた印象だった。日本の戦いぶりをどう評価するか?
植松:日本は、試合序盤に得点が生まれたことでなるべく早くに2点目を取りたい展開になったが、ホームの大観衆に後押しされつつ、とにかく早く追いつきたいと気迫を前面に出してくる豪州に対して、やや受け身になってしまった印象。結果的には、チャンスをより多く作った豪州の決定力不足と言う敵失に助けられ、後半の豪州の激しい攻勢をなんとかしのいで逃げきる辛勝となった。
ただ、そんなタフな試合でもきっちり勝ち抜けるのが、今回のなでしこの強みであり実力。試合内容はともかく勝利と言う結果で、アジアNo.1の実力を示して、アジア王座を奪還できた意味は非常に大きい。
Q:来年のブラジルW杯に向けたなでしこの展望は?
植松:女子フットボール界のアジアの雄たる立ち位置を結果で示した日本は、来年のW杯でも、優勝候補の一角と目されることになる。ただ世界の最上位レベルとはまだ若干の差があるのも事実。今後は、欧州や米国でプレーする海外組の選手たちはより確実にプレー時間を確保することが必要。よりレベルの高い環境に身を投じて経験を積むことで総合的なチーム力が向上、結果的に世界のトップとの差を縮めることに繋がる。
W杯に向けて、総合的な強化と入念な準備がなされ、選手のコンディションを大会にトップに持って来ることができれば、2011年、震災直後の日本に勇気を与えたあの感動以来の世界の頂点が見えて来るはず。
Q:マチルダズは再三のチャンスにもかかわらず、無得点で敗退した。豪州の戦いぶりをどう振り返る?
植松:試合前の下馬評では豪州がアンダードッグとされてはいたが、フィジカルの優位性やホームの大観衆に支えられて戦える点などを考慮すれば接戦となるのは予想できた。実際、マチルダスは思った以上に自分達らしいフットボールができたのではないか。早めの失点はゲームプラン外ではあったろうが、不要な2点目を失わずにとにかく追いつくという姿勢は、前半折り返してからの後半の激しい攻勢を見ても明らかだった。
ただ、前の質問でも触れたように、やはり決めるべきところで決めきれなかったことが自らの首を絞めた。いくつかのチャンスのうちの1つでも決まっていれば、全く違った結果になっていてもおかしくなかった。最終盤に日本が完全に5バックで守備に入った後も、ゴールをこじ開けるアイデアも余力もなかった。内容で上回りながら勝ち切れなかったのは、両国の実力の僅かな差が最少得点差での決着という結果にあらわれた形だ。マチルダスにとっては非常に悔しい結果となると同時に、世界のトップを目指すには何が足りないか-今後への大きな示唆に富む試合となった。
Q:マチルダズの今後の展望は?
植松:長年、マチルダスを追ってきた身にしてみると、ずっと同じ顔ぶれが代表に選ばれ続けていることに危機感を感じる。モンテムッロ監督は、選手起用に目新しさを見せてはいるが、世界のトップレベルと伍するにはスターティングメンバーとベンチの差が大きく、交代策で違いを産めないようでは厳しい。この状況を打破するには、いうまでもなく積極的な世代交代が必要。チーム内の競争が激化する中での総合力向上は、様々なレベルで目に見えた結果を残してきたモンテムッロ監督が、豪州を世界のトップと対等に戦える位置へと導くためには不可欠なタスクとなる。
Q:他に何かあればコメントを
植松:アジアフットボール界で、日豪戦というコンテンツの意味はかつてないほど大きくなり、日豪両国のライバル関係も深まった。両国間を行き来してプレーする選手の数も増えている。
今回のなでしこジャパンの快挙を支えたニールセン監督の右腕リア・ブレイニーは豪州女子フットボールの将来を任せられる逸材、いつかはマチルダスの指揮を取ることもあるだろう。
そんな日豪フットボール関係のさまざまな事象を16年の長きに渡って切り取ってきた弊コラム「日豪フットボール新時代」もご贔屓いただければ嬉しい。