メルボルンでは小泉防衛相とマールズ副首相が艦上で署名式
オーストラリア東部シドニー・クッタバル海軍基地に寄港した海上自衛隊の護衛艦「くまの」が6日、在留邦人関係者に公開された。くまのは、直線的でシャープな外観が近未来的な多目的護衛艦(FFM)「もがみ型」の2番艦。オーストラリアに輸出されるもがみ型の能力向上型(新型FFM)のベースとなる艦船だ。艦内を見学してきた。(リポート・写真:守屋太郎)

FFMは、従来の護衛艦とは異なる新しいコンセプトで設計され、くまのを含む12隻が建造された。船体は刀でスパッと斬ったような傾斜した平面で構成されていて、ステルス性が高い(レーダーに映りにくい)。乗員は「レーダーには小さな漁船程度にしか映らない」と話す。
なお、左奥に停泊しているのは、オーストラリア海軍の強襲揚陸艦「キャンベラ」。艦首がせり上がった全通式の甲板が特徴の同海軍史上最大の艦船だ。シドニー湾に入るくまのをエスコートした。

無人で広範囲の海中を自律的に航行し、機雷の探索を行う。水上無人機(USV)やソナーなどと連携し、機雷戦を支援する。掃海艇が行う危険な機雷探知を無人化している。

高圧空気で魚雷を発射し、敵潜水艦を無力化する。魚雷はエンジン推進で海中を自走し、音で潜水艦を探知・識別して目標に向かう。
乗員によると、くまのの主な役割は「偵察、哨戒(潜水艦の探知)、掃海(機雷の排除)など」だという。攻撃の主力艦を支える重要な脇役と言えそうだ。

主兵装の62口径5インチ砲は、最大射程約24キロ。1分間に15〜20発の弾丸を発射できる。対空、対水上、陸上支援の砲撃に使用する。約32キロの弾丸と約17キロの装薬(火薬の入った筒)は人力で給弾するが、発射までの工程は全自動で行える。乗員の仕事に性別は関係なく、女性隊員も重い弾丸と装薬の給弾を行うという。
艦橋(右奥)の上部には、ユニコーン(一角獣)・アンテナがそびえ、多機能レーダー、周囲を360度監視できる光学センサーといったハイテク機器、遠隔管制の機関銃などが並ぶ。

くまのが1機搭載する哨戒ヘリSH-60Kは、米海軍の艦載ヘリ「SH-60Bシーホーク」をベースにした「SH-60J」の改良型。後部の飛行甲板から発進、潜水艦を探知する。

雲ひとつないシドニーの空に夕闇が迫ると、艦尾に掲揚された旭日旗(自衛艦旗)が降ろされた。海自の艦艇では、航海中は常時、停泊中は午前8時から日没までの間、自衛隊旗を艦尾の旗ざおに掲揚することが規則で定められている。停泊中は毎日、日没時に自衛隊を降ろすセレモニーが執り行われる。厳粛な空気の中で、手の空いている乗員は自衛隊旗に向かって敬礼する。

哨戒ヘリの格納庫には、日章旗とオーストラリア国旗、それにこどもの日に合わせて鯉のぼりが掲げられている。壁には数多くの配管が張りめぐされ、アニメやSF映画さながらのメカメカしい雰囲気が漂っている。

くまのは南部メルボルンにも寄港。小泉進次郎防衛相とオーストラリアのリチャード・マールズ連邦副首相兼国防相が4月18日、くまのの飛行甲板の上で、もがみ型の能力向上型のオーストラリア移転に関する契約覚書に署名した。オーストラリア連邦政府は昨年8月、海軍の次期汎用フリゲート艦にもがみ型の能力向上型を選定していた。

三菱重工はこのほど、もがみ型の能力向上型のイラストを公開した。右舷に赤いカンガルーのロゴが見える。調達数11隻のうち、最初の3隻は同社が日本で建造し、2029年12月に1番艦を納入する計画だ。後の8隻は西オーストラリア州の海軍工廠で建造される。

その巨体は、広い海軍基地の中でも存在感を放っている。しかし、事実上の「軽空母」とされる海自最大の護衛艦「いずも」型と比べると、排水量が約5分の1、長さが半分強と大きくない。
くまのは3月、人員約110人とともに「令和8年豪州方面派遣訓練」に派遣された。
3月4日には、オーストラリア海軍主催の国際観艦式に参加した。観艦式は同海軍創設125周年を記念して行われ、19カ国から30隻の艦船が参加した。シドニーと周辺海域で行われた多国間共同訓練「KAKADU 2026」(3月23〜30日)、同「ASWEX 2026」(4月1日〜5月5日)にも参加。オーストラリアや各国海軍との連携を強化した。
6月に約3カ月間の任務を終え、母港・横須賀に帰港する。