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黄金に輝くもの/花のある生活

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花のある生活 ─ flower in life ─ 第34回
黄金に輝くもの

黄金柏を立ち上がらせるために、剣山は使用しないで花器の内壁に余った細枝で横一文字に技巧を施して花留めとしています
黄金柏を立ち上がらせるために、剣山は使用しないで花器の内壁に余った細枝で横一文字に技巧を施して花留めとしています

 少しずつ木々の葉が黄葉してゆく季節。四季のある国で生活させて頂けるのはありがたいと思います。秋になると昼夜の気温の差によって、木々の葉は緑から黄色へそして赤へと変わっていきます。まるで葉っぱの役割を終えて、散りゆく前の風前の灯火のように燃え盛る赤は、はかなくも美しく感じさせられます。

 私にとって花をいけることは、春の花木に魅せられたり、夏の濃緑(こみどり)に元気をもらえたり、秋の紅葉する美しさや、冬の枯れた木々の力強さを感じられて、四季をいけることにも悦びを感じています。寒さに耐えた枝の間に、「ぽっぽっ」とろうそくの炎が灯るような暖かさがある梅の花に、日本人は昔から春が来る喜びを感じてきました。困難なことや苦労が多いことを冬に例えて、それを乗り越えた先に春があり、幸せが訪れることを言っているのだと思います。

 4月号の作品は季節の色をいけています。ひと足早く哀愁ある秋の風情を感じて頂ければ幸いです。黄金柏と木苺の葉を上下に重ね合わせて、自然に変色した色のハーモニーを表現しています。果実として頂けるブルーベリーや木苺の葉は色の五重奏のように美しいものです。

 昔から日本で多くの人によって好んで語られてきた「艱難汝(かんなんなんじ)を玉(たま)にす」は、西洋のことわざにもAdversity makes a man wiseと、あるようです。巡って来る季節に身を任せるように、あらゆることを越えていける自分でありたいと思います。心の姿が映し出された人生の風景が、光に満ちて輝くものとなるように、力を尽くして心を磨き続けていけたらいいなとも思います。人生が黄金に輝くものとなるように、私にとってのいけばなは自分と向き合う大切なものとなっています。

このコラムの著者

Yoshimi

Yoshimi

いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンラインレッスン開催中。
Web: 7elements.me

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