【秋特集】 芸術の秋 / 食欲の秋 / 読書の秋
特別寄稿
特別寄稿 ほんだらけ店主・ライト知子さん
「本がもたらす極上の自分時間」
ほんだらけ・フル・オブ・ブックス
シドニーCBDのチャイナタウンに店舗を構える日本の書籍を扱う古書店。店内には毎週日本からの最新漫画週刊誌も届くマンガ喫茶スペースもあり、1時間5ドルから利用可能。
Web: fullofbooks.blogspot.com
朝夕肌寒さが増してくるこの季節、温かいコーヒーや香りのよいお気に入りのお茶を淹れて、ソファにゆったりと腰掛けて、静かな空間で本のページをめくりはじめる……。なんと幸せな瞬間でしょう。
この1年を振り返ると、世界的なパンデミックでものの在り方・考え方、ありとあらゆるものが急速にデジタル化されてゆきました。しかしながらここに来て、またアナログなものの魅力に回帰する流れが進んでいるような気配も日々実感しています。
毎日紙の本を扱っている私ですが、接客や本の整理をする以外はほぼパソコンとスマホで作業をするため、実は普段から結構デジタルまみれな日々を送っています。そしてプライベートでも、ネット上でエンターテイメントを楽しむ……、そんな生活を長いことしていたら、楽しい半面、やっぱり疲れ果ててしまい、逆に自分のリラックスする時間はそういうものから離れたいと感じるようになりました。そういう時、一番手軽で強い味方になってくれるのはやはり「紙の本」だったんですよね。
今、日豪プレスを開いて読んでくださっているこの瞬間も、皆さんわりと他の雑事から離れ静かな時間を過ごしておられるのではないでしょうか?
本や雑誌を読む時間というのは、本の内容を楽しむだけではなく、そこに付随する心の「ゆとり」、そして自分に向き合う時間や環境をもたらしてくれます。それはもしかすると、お休み前のベッドの中かもしれないし、カフェで過ごす時間かもしれませんね。その時間を通して、ワクワクしたり、満たされることで仕事のパフォーマンスも上がり、人間関係や生活全般もそれに伴って自然とスムーズに進んでゆく気がします。
そういえば先日、常連のお客様がパンデミックで外出を控えられていたため1年ぶりのご来店をなさいました。お会いした瞬間は久々の再会に感激! ひとしきりお話を楽しませて頂いたあとは、いつものようにたくさん本を選んで、笑顔でお帰りになりました。
数日後……、なんとそのお客様からお電話があったんです。こういう時、仕事柄、「何か不備があったのかな?」と一瞬心配してしまいましたが、なんとなんと「ありがとう!」とお礼のお電話だったのです。
この1年は本を買いにお出掛けになれなかったので、お休み前には動画を見て過ごしておられたそう。それが先日、買ってくださったばかりの本を読んで休まれたところ、ご自分でもビックリするほどぐっすり心地よく眠れたのだそうです。1年ぶりに質の良い睡眠がとれたのは本のおかげよと本当に喜んでくださいました。本の秘めたるパワーってなんと素晴らしいのだろうか? と実感せずにはいられない出来事でした。
数年前ある日本の番組の調査で、のべ41万人の高齢者のデータをもとにAIが解析したところ、健康寿命を延ばすのに有効なのは運動よりも食事よりもなんと「本や雑誌を読むこと」という結果が導かれたそうです。
更に、米・イエール大学の研究論文「読書と長寿の関連性」でも「読書習慣のある人はない人に比べて23カ月寿命が長い」という結果が出たそう。年齢性別に関わらず、純粋に本を読むことが長寿につながったと結論付けられていたんだそうです。
もしかして紙の本のポテンシャルって思っている以上にすごいのかもしれませんよね? この素晴らしいツールをあなたの毎日にぜひ取り入れて、この秋、極上の自分時間を楽しんでくださいね!
読書の秋にほんだらけがお勧めする3冊
思い込みを取り払い世界を正しく見る力を
『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』
ハンス・ロスリング
日経BP社
世界のさまざまな問題に対し、我々がいかに思い込みによって実は事実と異なるイメージ持っているか。しかも賢い人ほど事実を歪める“10の思い込み”に囚われていることが多いそう。それらの思い込みに気付き、事実に基づいて世界を見る習慣を付けてくれる必読のベストセラー。
お約束を見事に破る!? 痛快ミステリー
『名探偵の掟』
東野圭吾
講談社文庫
ミステリもいいけど面白さも必要! こちらただの推理小説ではありません。密室、時刻、アリバイなど、ミステリ作家たちが日頃頭をひねって生み出しているトリックやお約束をひっくり返してユーモアにしちゃった異例の連作短編集。本格推理ファンにはたまらない笑いのツボが詰まっています。
本格ミステリ史上に残る大トリック!
『十角館の殺人』
綾辻行人
講談社文庫
やっぱり読書の秋は本格ミステリに浸りたい! 30年以上も衰えることなく重版され続け今もミステリ史上不朽の名作としてファンに読み続けられている本作。点と点が繋がり、犯人を突き止めたかと思いきや、最後にすっかり騙される快感! この驚愕の結末、一度は体験して欲しい。