建築家
髙田浩一
近代的な様式と自然を融合させた革新的な設計スタイルで注目を集める建築家・髙田浩一氏。シドニー中心部の複合開発施設「セントラル・パーク」では建築賞「Best Tall Building」で世界一の称号を手にし、2021年2月にはニューヨークの「Architizer A+Firm Awards」ミディアム・ファーム部門でベスト・オブ・ザ・イヤーに輝くなど、更に国際社会での認知を高めた。本特集では同氏の建築物を本誌巻頭ギャラリーで紹介していく。
The National Museum of Qatar Gift Shops
2019年3月、カタールにオープンした、ジャン・ヌーヴェル国立カタール博物館「NMoQ」のギフト・ショップだ。同国で「光の洞窟」と呼ばれているスポットをイメージし、上部から自然光が差し込む砂漠の洞窟のような造形美を、3Dモデリング・ソフトを使用して作り上げた。4万ピース以上のヨーロッパ産のオークを使用した波打つようなデザインが人々の心を奪う。サステナビリティの世界的基準で4スター、及び環境評価ツールの評価基準LEEDでゴールドを獲得した世界初の博物館としても知られる。
Arc
シドニーCBDの中心部に建てられた、26階建て、高さ80メートルの2つの塔から構成されるArcは、深い歴史的背景を持つ建造物と最新のデザイン・テクノロジーを融合したハイブリッド。135戸の居住施設、86部屋のブティックホテル、カフェ、レストラン、リテールが入っており、2013年発表時にはシドニー・デザイン・エクセレンス・コンペティションで優勝した経歴を持つ。レンガの質感では、オーストラリアの中心部で見られる赤土の酸化、長年にわたる地形の侵食を表現。中央に配置されたアトニウムによる煙突効果が自然換気を促進するなど環境への配慮もなされている。
Urban Forest
緑に覆われた高層ビル、屋上に庭園を持つ低層ビル、そして共用スペースの公園をミックスしたブリスベンに建設予定のプロジェクト。ネイティブの種からセレクトされた2万に及ぶ植物、1000を超える樹木を使用。土台を上げ、地面の高さを周囲の公園と揃えることで、1642平方メートルの規模の公園が作り上げられる。訪問者が植物や生物多様性について学べるワールド・クラスの情報センターも設置予定。植物を媒介にプライベート・スペースとパブリック・スペースを統合した新たなコミュニティ・スペースが同地に新しいカルチャーを作り上げることだろう。
Upper House
オーストラリアのガジュマルとして知られる、クイーンズランド原産のモートンベイ・イチジクの造形にインスピレーションを得たブリスベンの居住施設。デイン・ツリー熱帯雨林の有機的形態に触発されたアッパーハウスは、ブリズベンの上空に向かって開かれていくイメージで設計されている。隣接する物件の快適性や居住者のプライバシーへの配慮からサウスバンク地区から少し離れたロケーションを選び、デザイン面でもその点に配慮しているという。都市全体の景観にフィットさせながら、自然との共生を表現した、髙田氏の思い描くイメージを具現化した建築物となるだろう。