オーストラリア・学生ビザ
いろいろな国からの留学生も多く訪れるオーストラリアですが、ここ数年は学生ビザの取得もかなり厳しくなっています。その理由の1つとして、学生ビザ申請の際にGenuine Temporary Entrant(GTE)、「真面目な短期居住者」であることを証明しなければならず、この主観的な審査条件に引っかかる申請者の方が多くいることが挙げられます。今回は、このGTE条件についてお話します。
GTEとは?
GTEとは前述したようにビザ申請者の渡航目的、滞在目的が最適なものであるということを示す条件です。なぜ、このような条件がビザ審査に課せられるようになったのかは、その由来を考えると、明らかです。
それは、これまで比較的取得が簡単であった学生ビザが悪用されてしまったことに始まります。学生ビザを取得すれば、オーストラリアに滞在できるだけではなく、働くこともできます。労働ビザや永住権の取得よりも手っ取り早く働けるというわけです。
移民局は、このような学生ビザの悪用を防ぐためにGTEを導入したのです。このGTEですが、非常に主観的な条件であり、何が良くて何が悪いかという線引きが難しいため、専門家でもケース・バイ・ケースでの判断を強いられます。移民局としては以下のような詳細を審査し、最終的な判断を下すこととなります。
- 申請者の履歴(年齢、学歴や職歴など)
- 申請者が現在置かれている状況
- 出身国、並びに出身国の経済状況
- 勉強を希望するコースが、今後どのような形で申請者に役立つのか?
- 申請者の移民・ビザ履歴
学生ビザは、あくまでもオーストラリアでの就学を通じて必要な知識や技術を体得し、その上で本国に戻り、将来に生かすことを前提としています。そのため、もしビザ申請がオーストラリア滞在を長引かせるために利用されると判断されたり、これまでの判例において、学生ビザの取得がその後のビザ申請または永住権の取得を意図していると判明した場合には、GTEの条件を満たさないと言われてきました。しかしながら、昨年末、Inderjit v Minister for Immigration, Citizenship, Migrant Services and Multicultural Affairs([2019]FCAFC 217)という裁判において、学生ビザの申請者が永住権の取得を意図していたとしても、それ自体がGTEの条件を破るものではないという判決が下りました。現在、ほぼ全ての学生ビザにおいてGTEの証明が問われておりますが、こうした状況も少しずつ変わっていくかもしれません。
清水英樹(Hideki Shimizu)
QLD州弁護士、ビザ・移民法政府公認アドバイザー(MARN9900985)。「フェニックス法律事務所」筆頭弁護士所長の他、移民ビザ専門コンサルティング会社「GOオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故、労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営する