クリケット特集、山本武白志独占インタビュー!
オージー・ライフ満喫には知っておいて損はない、クリケットの魅力に迫る!
クリケット、その世界有数の愛好国で暮らす読者の皆様には多少なじみはある存在だろう。クリケットは夏のスポーツで正直、シーズンの佳境は終わっている。しかし、ここであえて皆様を「サマー・オブ・クリケット」には少し遅い、まだ見えざるクリケットの世界へと誘いたい。これを機にクリケットに興味が持てれば、あなたのオージー・ライフも少し違ったものになるのかも……。独占インタビュー、W杯直前合宿ルポ、日系有望選手紹介、ルール解説とてんこ盛りの大特集、とくとご覧あれ。
取材・文・写真=タカ植松(本紙特約記者、ライター)/取材協力=日本クリケット協会
クリケットU19日本代表
ブリスベン合宿、写真レポート&監督ミニ・インタビュー
日本クリケット界にとって、歴史的に大きな一歩となったU19日本代表のクリケットU19W杯出場。南アフリカで行われていた同大会(今年1月17日から2月9日)で、日本は6戦で勝利をつかめず参加16カ国中16位という結果で大会を去った。それでも、大会を通じて世界トップ・レベルとの大きな差を感じた経験は、必ず日本クリケット界の発展のための糧となるに違いない。その大会に先駆けて、この年末年始にブリスベンで行われたU19日本代表の直前合宿を覗いてきたので、その時の様子を写真と共にレポートする。(取材:2019年12月30日、31日)
12月30日、ブリスベンの地元クラブ、ノーザン・サバーブス・ディストリクト・クリケット・クラブとの練習試合が行われた(写真上)。このクラブには、日本代表のフレミング健や今回インタビューした山本武白志も所属する。
キャプテンのサーゲート真亜春(マーカス/写真中)。既に日本代表でも活躍する日本クリケット界の若手の期待の星。U19W杯の東アジア太平洋予選では、大会優秀選手賞とベスト・バッツマン賞を獲得した揺るぎないチームの主力で、W杯大会期間中も卓越したリーダーシップで平均年齢16歳という若いチームをけん引した。
今回の合宿の同行スタッフには、現役日本代表選手の姿も見えた(写真下)。写真の左から、日本クリケット協会所属で東京の昭島に拠点を置き、普及活動に従事する宮地直実。続いて、日本代表の主力でブリスベン出身のフレミング健は、現地での試合のアレンジなど今回の遠征の現地サポートを買って出た。同じく日本代表の富澤望は、メルボルンでクリケット武者修行中でインスタグラム(@n.tommy11)で現地での挑戦を積極的に発信する。前述のサーゲート真亜春は、18歳ながら日本代表でも欠かせない主力として活躍する。
翌31日の豪州クリケット協会の専用トレーニング施設ナショナル・クリケット・センター(NCC)でのセッションには、豪州国内の日本にルーツを持つ未来の日本代表選手候補が練習に参加して共に汗を流した。
クリケット男子U19日本代表コーチ
ドゥーグル・ベディングフィールド氏 ミニ・インタビュー
――今回の合宿は順調か。
「今のところ順調。天候も良く、NCCのようなすばらしい施設へのアクセスもでき、強いクラブとの試合も組めた。日本と違う全てに整った環境を選手たちも楽しんでいる」
――今回のU19W杯出場の意義をどう捉えるか。
「日本という国の存在を、世界のクリケット界にしっかり示す大きな意味がある。これまでは、誰も日本という国をクリケットに関連付けることはなかったが、今回、世界から選ばれた16カ国の1つとしてプレーすることで、日本にもクリケットがあることを認識してもらえる」
――今大会の目標は?
「前回優勝のインドを始めとした世界有数の強豪国と相まみえる経験は、必ずや日本クリケット界の大きな糧となる。今大会出場は日本にとって、勝敗を度外視した、とても大きな『学習の場』。いかに世界と競うことができるか、最後まで試合を諦めずにやれるか、そういうところにフォーカスしたい」
オーストラリアから参加、U19日本代表の主力としてプレーした太田健斗選手の大会終了後コメント
「今回は、U19W杯に日本代表として参加して貴重な体験を積めた。対戦相手のインド、スリランカ、ニュージーランドは予想通りレベルが数段上で、日本ももう少し食い下がりたかったが、力と経験の差を見せつけられた。自分としてはどんな状況でも落ち着いてプレーできて、世界トップ・クラスとの対戦を楽しめた。今大会で得た多くの課題を今後に生かすため、練習に励みたい」
今さら聞けない、クリケットのい・ろ・は
ここでは、クリケット観戦の導入的な知識、いわゆるクリケットの「いろは」をいくつかのポイントで解説したい。
1. クリケットの基本
攻守それぞれのチームは11人から成る。攻撃時には、グラウンド中心のピッチと呼ばれるエリアの両端に2人の「バッツマン」。守備側は「ボウラー」とボウラーの投げるボールを受ける「ウィケット・キーパー」がピッチ周りにいて、それ以外の9人はグラウンドに散って守備をする。ピッチの両端には、3本の柱(ストンプ)の上にベイルと呼ばれるものが置かれたウィケットが配置される。一言で言えば、「ボウラーが投げるボールをバッツマンが打ち返し、ルールに定められた諸条件下でアウトにならずにどれだけのラン(得点)を上げられるか、チームとしての10アウトになるまでの総ラン(得点)数の優劣を競い合う」のがクリケット。
2. どうやったら「得点」できるの、どうなったら「アウト」?
ボウラーが投げたボールをバッツマンは打ち返し、ボールが転がっている間にピッチの両端をクリースというラインを越えて往復する。ピッチの逆側にたどり着ければ1ラン(1点)、グラウンドを転々としたボールがバウンダリーという円形のグラウンドの境界線を越えれば4点。打ち上がったボールがバウンドせずそのままバウンダリーを越えたら6点。では、どうなれば「アウト」になるのか。厳密に言えば11通りの「アウト」があるが、ここでは、主だった3つを紹介しよう。
◇ボウルド(bowled)
ボウラーの投球を打ち返せず、守っているウィケットをボールによって倒された場合。
◇コート(caught)
打ち返したボールが打ち上がって、それを守備側にダイレクトでキャッチされた場合。
◇ラン・アウト(run out)
走っているバッツマンがクリースにたどり着く前に、ウィケットが倒された場合。
3. クリケットって、すごく長いの?
確かに伝統的な試合方式の国ごとの対抗戦「テスト・マッチ」は数日掛けて勝敗を決する。しかし、最近は、50オーバーで争い1日で決着が付く(ワン・デー)、さらに短い20オーバーで終わる(T20)が主流になってきている。その中でも、若い層を中心に大人気のドラマチックな演出で大観衆を集める「ビック・バッシュ」は、T20フォーマットのプロ・リーグ戦。
※各オーバーは6球で、ワンデーなら300球、T20で120球とボウラーの投じる球数の合計は決められている。
4. 投げる、打つは同じでも野球とは全然違う!
「クリケットと野球は似てる」という誤解がある。「投げる」「打つ」という動作は同じでも、投げ方、打ち方は全く異なる。ボウラーは、速球派のファスト・ボウラーと技巧派のスピナーに大別され、いずれも、ひじをまっすぐ伸ばして、必ずワン・バウンドさせた投球を1オーバー6回行う。バッツマンに三振はない。ウィケットを倒されなければ、空振りを何回してもいい。また、クリケットには野球のようなファウルゾーンはない。「似て非なるもの」と言うより、むしろ「全く違うもの」だ。
クリケットの競技概要をつかむのにお勧めなのが、日本クリケット協会のホームページ。その中でも「クリケットの概要」という動画は競技の大まかな概要を知るにはうってつけだ。
参考:Web: cricket.or.jp/about-cricket(日本クリケット協会、PDF版ダウンロード可)
動画:cricket.or.jp/what-is-cricket-videos(日本クリケット協会)または、YouTube: youtu.be/3dFDYipvtV0(YouTube)
未来の日本代表!?
日系クリケット有望選手紹介写真館
今回取り上げたU19日本代表でプレーするなど若い日豪ハーフ選手は、既に日本クリケット界で活躍している。ここでは、今回の取材の過程で知り合ったさまざまなレベルでクリケットに打ち込む未来の日本代表候補の日系選手を紹介したい。彼らに共通するのは、その溢れんばかりの「クリケット愛」。近い将来、彼らを取材する日を楽しみにしたい。