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日豪ビジネス
日本貿易振興機構(ジェトロ)シドニー事務所長
中里浩之
日豪ビジネス
日本貿易振興機構(ジェトロ)
シドニー事務所長
中里浩之
プロフィル◎2017年8月下旬から現職。企業の海外展開サポート、日本産農林水産物・食品の輸出促進、対日直接投資の促進、調査・情報発信などに取り組む。早稲田大学法学部卒。
日豪ビジネス関係は更なる拡大と深化
日豪ビジネス関係は、2018年も更なる深化と拡大を遂げ、19年も一層の進展が予想される。
オーストラリアの対内直接投資残高を見ると、日本は米国に次ぎ第2位に位置している。日本企業の対豪投資は昨今、多くの分野に広がりを見せているが、18年の大きな話題の1つは、国際石油開発帝石(インペックス)によるイクシスLNGプロジェクトの生産開始と出荷だった。同プロジェクトは、今後40年にわたるもので、日豪両国の期待が高く、11月16日に北部準州ダーウィンで開催された操業開始記念式典には、安倍総理、モリソン首相、世耕経済産業大臣、キャナバン資源・豪北部担当大臣、ガナー北部準州首席大臣が参加され、盛大に行われた。オーストラリアにとって、日本はLNG輸出の最大の相手国であり、また、日本にとって、オーストラリアはLNG輸入の最大の相手国であるが、イクシス・プロジェクトの開始により、この関係は一層拡大する。
この他でも新たな協力分野として、オーストラリアの大手エネルギー会社AGLエナジー、川崎重工業、電源開発、岩谷産業、丸紅の5社連合が、ビクトリア州ラトローブバレーの褐炭から製造した水素を液化して日本へ運ぶ、世界初の「水素サプライチェーン構築の実証事業」の開始を決定し、4月に起工式典が開催され、期待を集めた。
通商関係を見ると、米国が離脱後、日豪が強力に推進したCPTPPは、18年12月30日に発効。日豪EPAが15年1月に発効後、日豪の貿易は一段と促進されたが、CPTPP発効による更なる拡大が期待される。
オーストラリア経済を見ると、18年9月期の実質GDP成長率は減速したが、109四半期連続で景気後退がない世界記録を更新中だ。IMFが18年10月に出した経済見通しでは、18年の実質GDP成長率は3.2%と12年の3.9%以来の高成長が予想された。19年に関しては、米中の貿易摩擦の影響などにより、0.3ポイント下方修正されたものの、2.8%の成長見通しと引き続き堅調の予想だ。人口を見ると、18年8月に2,500万人を超えた。このところ、人口は3年ごとに100万人ずつ増加している。移民増が約6割、自然増が約4割寄与しており、今後も人口増加が見込まれ、11月に統計局が出した見通しでは、シナリオによってだが、66年には、3,740万人と4,920万人の間になるとした。他方、特に都市部の人口増により、交通渋滞といった問題があり、更には、非居住者による積極的な住宅投資も加わり、住宅価格が高騰するといった問題が深まった。なお、住宅に関しては、価格調整が見られており、また、移民に関しては、年間の受け入れ人数を削減する動きが出てきている。
こうした一定の都市への集中を緩和することにもつながるが、西シドニーの新空港開業(26年の予定)と、その周りの空港都市(エアロトポリス)開発によるニュー・サウス・ウェールズ州の第3の都市創造の計画は、連邦政府、州政府、当該地域の自治体が連携して取り組む大規模なものだ。日本企業の参画が期待されており、18年10月以降、三菱重工業、三井住友銀行、日立製作所、UR都市機構がそれぞれ、州政府と覚書を締結した。
日本からの農林水産物・食品の輸出促進について見ると、18年5月29日に、日本産牛肉のオーストラリア向けの輸出が17年ぶりに解禁となった。これを受け、8月にジェトロは、日本の農林水産省、在シドニー日本国総領事館と連携し、日本産和牛に焦点を当てる形で、シドニーにて日本産食品の輸出商談会とプロモーション・イベントを開催した。また、日本産柿もオーストラリアへの輸出が可能になり、和歌山県が、11月に柿のプモーションをシドニーで行った。日本政府は、19年に日本からの農林水産物・食品の輸出を1兆円にする目標を掲げており、オーストラリア向けは17年は9位で148億円だった。19年は上記目標の仕上げの年であり、皆様にも、日本産農林水産物・食品をぜひたくさん召し上がって頂きたい。
観光客の動きを見ると、オーストラリアからの訪日客数は、17年に約50万人と過去最高を記録(出所JNTO)したが、18年にこれを更新することは間違いないだろう。日本では19年にラグビー・ワールド・カップ、20年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。更には、25年には大阪での万博開催も決定し、スポーツ、観光などの幅広い分野で、日本への関心は高まっていくだろう。