シドニー各所で行われているイベントを不定期リポート!
オーストラリアで最大級の“日本のお祭り”
祭りジャパン・フェスティバル2018
毎年12月上旬、シドニー中心部ダーリング・ハーバーを舞台に開催される日本のお祭り「祭りジャパン・フェスティバル」。多くの来場者と共に活況を呈した、2018年の祭りの当日の様子をリポートする。(取材・文=山内亮治)
前年並みの大規模、4万人以上が来場
日本文化の紹介及び日系とローカル・コミュニティーの友好を目的に2006年から毎年シドニーで開催されている日本のお祭り「祭りジャパン・フェスティバル」。同フェスティバルが2018年12月8日、ダーリング・ハーバーのタンバロン・パークで開催された。在シドニー日本国総領事館、シドニー日本クラブらによって構成される諮問(しもん)委員会を始め、多くの協賛企業がサポートするイベントは年々その規模を拡大。12年目となった昨年の祭りジャパン・フェスティバルにも前年並みとなる4万人以上(運営委員会事務局公式発表)が来場し、会場は大変なにぎわいを見せた。
イベントでは午前11時半より、メイン・ステージで和太鼓を始めとした楽器演奏、武道、書道、歌、ダンスなどさまざまなパフォーマンスと共に日本文化が披露された。午後1時過ぎからはオープニング・セレモニーが行われ、竹若敬三在シドニー日本国総領事、ロバート・コック市議会議員、小山真之シドニー日本商工会議所会頭、井上大輔シドニー日本人会会長、水越有史郎シドニー日本クラブ会長が登壇した。竹若総領事とコック市議のあいさつに続いて登壇した5人による鏡割りが行われるとステージ周辺は大きな拍手に包まれた。
会場には観光・交通関係の企業や日本の自治体のブースが多数並んだ他、多くの日本食屋台と日本酒などのアルコール・ブースが出店。特に日本食屋台とアルコール・ブースに関しては、イベント閉幕近くまでその客足が途絶えることはなかった。この他に、華道・茶道・書道・折り紙の日本文化のワークショップやヨーヨー、スーパーボールすくいなどの出し物も日本の祭りを彩った。
夜になると、会場中央に設置されたやぐらを囲み盆踊りが行われた。炭坑節に合わせ盆踊りを踊るという、まさに日本の夏祭りを思わせる雰囲気と共に18年の祭りジャパン・フェスティバルは幕を閉じた。
イベントを支えたボランティア
4万人以上の来場者を迎え、8時間にわたり開催されたイベントにおいて忘れてはならないのが、それを支えたボランティアの存在だ。中・長期的に関わる中心メンバーに加え、当日参加も80人近くに上るなど、合計で100人以上のボランティアによって祭りジャパン・フェスティバルは運営された。この中にはワーキング・ホリデー・メーカーも多く、来豪間もないボランティア・スタッフの1人は「日本をオーストラリア人に紹介するイベントに関わるのは、当たり前だが日本にいては難しいこと。貴重な経験を積めた」とイベント運営に関わって得られた充実感を口にした。
また関係者への取材の中で、ボランティアの1割近くは日本人以外の地元市民であることが分かった。フェイスブックなどSNSを通じ祭りの存在を知り、参加したという。祭りジャパン・フェスティバルは今や、イベント運営への参加という形でもシドニーの多文化社会へ楽しみを提供している。
祭りジャパン・フェスティバル主催者
チョーカー和子さん・水越有史郎さんインタビュー
――2018年の「祭りジャパン・フェスティバル」のテーマは“ありがとう~感謝~”と伺っていますが、そのテーマに決まった経緯について教えてください。
チョーカー和子(以下、チョーカー):このテーマを決めたのはボランティアの方々です。年間を通して参加しているボランティアがいて、その中で広報を担当しているチームが18年のテーマを決めました。
――感謝ということで、これまでの祭りの歴史を振り返るといった意味合いがありますか。
チョーカー:私個人としては、この祭りに感謝の気持ちをすごく感じています。シドニー日本クラブとしては、20年近く前から日本のお祭りを運営していますが、最初は500人から1,000人といった規模でした。会場も今とは違いもっと小さく、盆踊り大会として始まった歴史があります。それを考えると、自分たちを受け入れてくれたシドニーの多文化社会は非常に寛容で、ありがたい存在だと思っています。
そして、この祭りを運営しているボランティアにも感謝しています。当日参加の人だけでなく、ステージでパフォーマンスを披露する人たち、ワークショップを運営するスタッフなどは全てボランティアになります。飲食の屋台を出店している人たちもイベント当日の天候によっては収益が上げられない恐れがありますから、ある意味ボランティアに近いかもしれません。こうして考えると、本当に多くの人たちに支えられています。感謝の気持ちでいっぱいです。
――ボランティアが主体となっているイベントということですが、この日までにどのくらいの準備期間を要したのでしょうか。
水越有史郎(以下、水越):祭りジャパン・フェスティバルに関しては、2月に第1回の運営委員会を開催し、その後月1回のペースで準備のための委員会を開いて準備を進めました。そして、本格的にボランティアの募集を開始したのは6月になります。
シドニーでの日本の祭りはダーリング・ハーバー以外にもパラマタとチャッツウッドでもあるため、ボランティアの中にはイベント・リーダーのような立場で半年から1年近く関わっている人もいます。パラマタとチャッツウッドのお祭りに関わるスタッフにとっては、ダーリング・ハーバーでの祭りは言わば総決算になります。
――祭りジャパン・フェスティバルだけでなく、その他の祭りも含めると年間を通し大きな組織としての運営が求められますね。
チョーカー:今は多くのボランティアに支えられイベントの運営ができていますが、20年近く前の祭りを始めたころは、まさに手弁当といった状態での運営でした。全てを自分たちで賄い、忘れた物があったら当日走り回って用意していましたが、現在は多くのスタッフを擁する「祭りイン・シドニーINC」というNPOとして組織が整備されているので、そのようなことはもうありません。年々参加してくださる人が増えていったお陰です。
――組織の拡大と共にイベントの規模も大きくなってきました。運営面での工夫がより求められるようになってきているのではないでしょうか。
水越:イベントを行う上での懸念点としては、リスク・マネジメントが挙げられます。数万人を超える人が訪れるわけですから。特に、天候に恵まれることが多い時期でのイベント開催なので、熱中症に気を付けなければなりません。そこで、18年の祭りジャパン・フェスティバルでは、熱中症対策として水分補給のための給水場を会場内に設置し、日傘も前年より増やしました。毎年、ある程度の来場者の規模を見込んで、リスク・マネジメントを始めとした抜かりない準備をしなければなりません。
チョーカー:多くの人が関わってくれるイベントなので、準備段階から多くのアイデアが出されます。その中でなかなか考え付かなかったアイデアも出てきます。それと同時に運営委員会の方でも運営のアイデアが出されるので、それら多様なアイデアをバランス良くうまく取捨選択することが求められるようになってきました。運営委員会としてアイデアを精査し、全体をうまくコントロールする必要が出てきています。
水越:アイデアは本当にたくさん出てくるのですが、運営予算の関係もありますから、これはありがたい部分であり、難しい部分でもあります。
――祭りジャパン・フェスティバルは年々進化している印象を受けますが、今後はどのような展望を思い描いていますか。
チョーカー:個人的な思いかもしれませんが、祭りジャパン・フェスティバルはあくまでもコミュニティーのためのお祭りであって欲しいと思っています。日本の文化に興味がある人のためだけでなく、日系で2世や3世を育てている人が子どもたちに日本の雰囲気を味わせてあげられる、そういう場所であって欲しいと思っています。文化の維持に加え、オーストラリア人に日本文化のプロモーションをできるコミュニティーのお祭りであって欲しいと思っています。
水越:毎年新たな試みがあり、17年からは会場内にやぐらを建てました。今年はそのやぐらを太鼓がたたけるだけでなく数人が踊れるように少し大きくしたんです。来年は、できれば本物の神輿を用意したいと考えています。そのために、大工の経験がある人に参加して頂けるとうれしいと思っています。毎年、会場に来てくださった方が楽しめるものを新たに考え、実行に移していくつもりです。
――本日はありがとうございました。
イベント・フォト・ギャラリー
祭りジャパン・フェスティバル2018の当日の様子を多くの写真と共にお届けする。