第14回:2月の甘い香り
「Happy Valentines」の文字を目にするこの季節、皆様いかがお過ごしですか。日本では女性から男性に愛を込めてチョコレートを渡す習慣がありますが、オーストラリアではその逆で男性から女性に花束などのプレゼントを贈ります。私が以前に住んでいたシンガポールでも、男性が花束をオーダーしたり、ご自身でお花をアレンジメントされて持ち帰っていく光景をよく覚えています。とてもホットなイベントですね。
2月の日本では桜を見るにはまだ早く余寒の時期ではありますが、甘い香りが春の訪れを感じさせてくれる蝋梅(ろうばい)の花が咲きます。新春に香り高い花を咲かせる貴重な蝋梅の英語名「wintersweet」は中国で、梅、水仙、椿と共に、「雪中の四花」として尊ばれています。江戸時代初期に日本へ渡来し、他の花木に先駆けて咲く香りの良い花が愛され、生け花や茶花として使用されてきました。蝋梅は梅の仲間と思われがちですが、正式にはウメ科ではなくロウバイ科の植物。蝋で作られたかのような質感の黄色の可愛いらしい花を咲かせます。蝋梅が香りを放ったら春を呼ぶかのように梅が咲き、そして桜が一気に花開き、百花繚乱な季節の到来です。何と雅やかな季節の移り変わりだと、日本人であることを誇らしく思えてなりません。
冬の北風にたなびきながらも強い枝ぶりを感じさせてくれる蝋梅を大胆に使い、透き通るような香りの水仙を入れた作品(写真左)。愛らしいグロリオーサの花を加え、家族や友人の幸せを願い花をいけました。オーストラリアに義理チョコという習慣はありませんが、感謝の気持ちを込めて男性から女性にチョコレートに花束を添えてプレゼントをすることも悪くないかもしれないですね。甘い香りは、人を幸せにしてくれますものね。
Yoshimi
草月流華道講師。幼少の頃から花を嗜む。学生の頃、本格的に活動を始め大阪高島屋に出展。兵庫県議会公館迎え花を担当。シンガポール駐在中に趣味の油絵といけばな展をシンガポール高島屋で行う。現在はシドニーのセント・アイビスのスタジオで華道教室フラワー・イン・ライフ(www.7elements.me)を開講