第15回:桃の節句 雛祭り
こんにちは。いけばな講師をしていますYoshimiです。
桃の節句・雛(ひな)祭りと聞くと、女の子らしい可愛い色、丸くボンボンになった形の花や、ピンク色のフリルのような愛らしい物を連想します。日本では節目節目に災いから身を守る行事が伝統的に行われていたので、旧暦の3月である上巳(じょうし)の節句に、女の子の健やかな成長を願ってお雛様を飾り、厄除けの力があるとされていた桃の花を飾っていたそうです。
雛壇には桜の花、橘の実が飾ってありませんか? これも魔除けになる、この季節の植物です。海外で暮らしていると、私たち日本人はこういった季節の行事にとても疎(うと)くなってしまいます。特にオーストラリアは季節が真逆ですから、なおさらかもしれません。
しかし最近では海外で子育てをされていながらも、日本の文化を子どもたちに伝えようと、あえて節目の行事を大切にされていらっしゃるご家庭が増えてきているように思います。このように意識を持つことは、本当にすばらしいことだと思います。せっかく飾ったお雛様に、アーティフィシャル・フラワー(造花)を添えて置くのも奇麗ですが、もし余裕があり、生の花をいけてみることができたら、いけるのは簡単です。
右記の写真の作品は、3ステップで完成します。ぜひ参考にしてみてください。まず初めに、メイン・フラワーのジンジャーを入れます。これだけでも力強い印象ですが、次にタマシダを左下方に向けて1枚、そして右上方に数枚挿します。最後に、スイート・ウィリアムを花器口の前方に固めて挿して、左後方にトルコキキョウで影を作るように入れます。これで出来上がりです。上下左右に角度を変えて入れることで、どこから見ても形の良いいけばなが完成します。子どもの成長を願って花をいけることは自分も楽しめ、他の人も楽しませることができるので、一度やってみてくださいね。
愛情を込めていけた花には、言葉を超えた優しさが詰まっています。オーストラリアのネイティブ・フラワーは持ちが良いので、生活にたくさん取り入れてみてはいかがでしょうか。優しさに包まれた生活は、人を幸せにしてくれますね。
Yoshimi
草月流華道講師。幼少の頃から花を嗜む。学生の頃、本格的に活動を始め大阪高島屋に出展。兵庫県議会公館迎え花を担当。シンガポール駐在中に趣味の油絵といけばな展をシンガポール高島屋で行う。現在はシドニーのセント・アイビスのスタジオで華道教室フラワー・イン・ライフ(www.7elements.me)を開講