第18回:脇役から主役になれる
こんにちは。いけばな講師をしていますYoshimiです。めっきりと朝晩が冷え込み、紅葉した木々の葉が順番に色を変えて落ちていきます。四季のある国ならではのこの光景は、冬の澄んだ空気と身の引き締まる冷たさの朝が、日本にいるような感覚を思い起こさせてくれます。庭園などでは椿や紫紺野牡丹(しこんのぼたん)が咲き乱れ、遠目で眺めているだけでも奇麗ですが、この時期は日本と同じように花の種類がかなり少なくなります。
そんな冬枯れの時期でも楽しめるのが霞草(かすみそう)です。英語名は「baby’s breath(赤ちゃんの吐息)」。そう、いつも脇役になっている、白い小さな花を無数に付けるふわっとしたあの霞草です。霞草だけではどうしてもぼんやりしてしまい、アレンジメントの仕様がなく、ついつい無造作に挿しておしまいとなりがちです。しかし意外にも、夜のダウン・ライトがある場所ではこの白い小さな花は光が灯ったようにとても発色が良く、場を明るくしてくれます。
ただ霞草だけでアレンジするのは大変難しいので、コツとしては、ガサッとひとつかみした白い色の塊を切るように(色切り)、線を引くように明るい色の花を入れてあげましょう。その場合、左右の中心に線を入れシンメトリーにするのではなく、3分の1と3分の2の割合の箇所を選ぶとセンス良く仕上がります。
霞草の茎は折れやすくダメージを受けやすいので、水を入れた個性的なポットなどに茎を短く切ってそのままストンと入れ、葉物を添えてあげると、花も容器も奇麗に見えます。花が終わりそうになっても、ピンクやブルーにカラー・スプレーをして長く楽しむことができます。
いつも脇役にすぎない花も、いけ方によっては堂々たる主役の花に変わります。いつでもふわっと包んでくれるような優しい花を、たまには主役にしてあげてください。いよいよ冬の到来、花のある生活で部屋も気持ちも温かくしてあげてくださいね。
Yoshimi
草月流華道講師。幼少の頃から花を嗜む。学生の頃、本格的に活動を始め大阪高島屋に出展。兵庫県議会公館迎え花を担当。シンガポール駐在中に趣味の油絵といけばな展をシンガポール高島屋で行う。現在はシドニーのセント・アイビスのスタジオで華道教室フラワー・イン・ライフ(www.7elements.me)を開講