第59回
息子をライバル視する父親
【前回までのあらすじ】
極寒の北海道から、オーストラリアへ家族4人で移住。オージーの夫との一風変わった日常生活を綴っている。
国際結婚の良いところ、それは「ハーフの子どもは可愛い」ということだ(特に日系の子どもはオーストラリア人に「カワイイ!!」とモテはやされること多し)。
3回にわたって娘のことを綴ってきたが、実は我が家には息子もいる。父親にとって娘とは、何ものにも代え難いとても愛おしい存在らしい。その反対に、父親にとって息子とは、“自分の存在意義すらをも脅かすもの”なのかもしれない。夫を見てそう感じたことがあった。
息子が生まれた時に「あまりにも自分に似ている」と気付いた夫は、最初のうちは実はなかなか息子を「可愛い」と思えなかったそうだ。「自分のように大変な人生を送るのか?と可哀想に思ったのと、まるで自分のクローンを見ているようで、ちょっと怖かった」と後に語っている(出産を終えたばかりの私に、そんな様子はおくびにも出さなかった夫は偉い)。
そして、出産後1カ月が経ったころのある日、ますます可愛くなった息子だったが、夫は「屈託なく笑う息子を見て、自分の息子として初めて受け入れられた」と、打ち明けてきたのだ。男心はなかなか複雑だ。
可愛い息子は、夫の顔とは全く似ていない気がするけれど、背が高くて細くてひょろっとしているところや、猫っ毛で割と頭髪が薄いタイプという部分は似ている。「もしかすると、将来的に夫みたいに頭髪が薄くなる?」と、少し可哀想な気もする。けれども、私の父親はとても髪が多い人だったし、隔世遺伝だと言う人もいるので、「息子は大丈夫に違いない」と一縷(いちる)みに賭けることにしている。
娘の外見は、どちらかと言うと「かなり白人寄りの顔立ち」。息子は「日本人寄りの顔立ち」をしている。どちらに似ていても親にとってはかけがえのない子どもたち。むしろ外見よりも親として気になるのは、将来の夢だ。
いつまで経っても赤ちゃんみたいで、「将来何になりたいの?」と聞いても「ポケモン」と答える、ボケボケな息子である。
ポップ登美子
北海道札幌市出身。オージーの夫と2人の子どもと共にノーザン・テリトリーに在住中。本紙コラムの他にも、「地球の歩き方」海外特派員などでのフリーランス・ライターや日本語ガイド、日本語教師としても活躍中