12月16日にオペラ・ハウスでシドニー最大規模の日本伝統芸能の祭典「令和日本伝統芸能祭」が開催される。令和新元年を記念し、また来年の東京五輪・パラリンピックに向けて日本の魅力をアピールするために、シドニーはもちろん、ブリスベンやメルボルン、東京や沖縄から日本伝統芸能のプロたちが集う。令和日本伝統芸能祭の詳しい内容と、同イベントに出演するオーストラリアの和太鼓集団「TaikOz」のメンバーであり、岩手県の伝統芸能「鬼剣舞(おにけんばい)」を踊る濵田隆二さんのイベントに掛ける思いを紹介する。(文・インタビュー=山下香)
本格的な日本の伝統芸能をシドニーで楽しもう!
同イベントの最大の魅力は、日本でもなかなか見ることができない本格的な日本の伝統芸能を鑑賞することができるという点だ。同イベントを主催するJCSレインボー・プロジェクトの代表・平野由紀子さんの「日本文化への関心が高まる今だからこそ、海外の人たちに格式高い本格的な古典芸能を見て欲しい」という思いから、これまでにないほど伝統芸能のプロフェッショナルたちが多く出演するイベントになっている。出演者は以下の通り。
■会場:Sydney Opera House(Bennelong Point, Sydney, NSW)
■開催日時:12月16日(月)7:00PM~
■応募先Web: nichigopress.jp/campaign
■応募締切:11月17日(日)
■備考:1つのメール・アドレスにつき応募は1回まで。当選発表は発送をもって代えさせて頂きます。
TaikOz、鬼剣舞をパフォーマンス!
濵田隆二さんインタビュー
――TaikOzに入るきっかけは何だったのでしょう?
TaikOzのコンサートを観に行ったのがきっかけです。僕自身は小学校のころから和太鼓を演奏していたのですが、TaikOzの演奏を見た時に衝撃を受けました。日本には和太鼓チームが星の数ほどありますが、「こういう風に叩く人はいないな」と思いました。日本の太鼓チームはショー的で、気合で押すような一辺倒な演奏が多いのですが、TaikOzは太鼓を音楽として捉えていると感じました。人が主役になるのではなく、太鼓の音を聞かせようとしていると。その後、TaikOzが主催する研修に研修生として参加するようになりました。2年ほど研修を受けた後、ようやくメンバーとして認められるようになりました。
――TaikOzは他の太鼓チームと何が違うのでしょう?
メンバーのほとんどがオーストラリア人という点で、日本の太鼓チームと演奏や発想が違うと思います。日本の太鼓をリスペクトした上で、日本の太鼓をそのままやっても勝てないから、自分たちの音を作り出すという発想だと思います。また、メンバーのほとんどがオーケストラのパーカッション出身なので、演奏する楽曲は、技術的にも難しく音楽的な知識も必要になるものが多いと思います。太鼓をちゃんと楽器として捉えて、発展させたものがTaikOzの演奏だと思います。
――TaiKOzの演奏の他にも今回は鬼剣舞も踊られますね。鬼剣舞とはどんな踊りですか?
岩手県に伝わる1,000年以上続く伝統芸能で、五穀豊穣を願って踊られる踊りです。もともとは念仏を唱えながら踊っていた念仏踊りを、鬼のお面を被って踊るようなったのが鬼剣舞です。僕自身はTaikOzの中に鬼剣舞を学ぶグループがあることを知って、鬼剣舞に興味を持ちました。それで5年前から毎年岩手県の北上市の岩崎に伺って「岩崎鬼剣舞」という団体に指導を受けるようになりました。鬼剣舞は、地元でとても愛されている芸能で若い人たちも踊ります。高校には鬼剣舞部という部があるほどです。また年を取っても、音楽隊として鬼剣舞に参加したりして、本当に幅広い世代に愛されている芸能です。
――実際に現地で指導を受けてどんなことを感じましたか?
日本の伝統芸能は廃れるものが多いなか、岩崎鬼剣舞はどんどん力強くなっていくように感じましたね。また、地元で愛されている芸能だからこそ、責任を持って踊らなければいけないなとも感じました。本来、伝統芸能は地元の人のために踊るものだと思います。言ってしまえば部外者である僕たちが、こうして踊らせてもらえることを本当にありがたいと思います。
――TaiKOzの演奏と鬼剣舞それぞれの見どころを教えてください。
今回、TaikOzとしては、単体の演奏の他に剣舞の荒井龍凰さんとの共演もあるのですが、全く違う演奏を楽しめると思います。TaikOzの演奏は迫力を全面に押したパフォーマンスになる一方、剣舞では180度変わります。鬼剣舞は日本の泥臭い、深い芸能が見どころ。1,000年以上続く芸能なので、踊り自体にパワーがあります。鬼気迫る踊りをぜひ皆さんに観てもらいたいです。また、こういう伝統芸能を海外で演じる意味も感じていて、日本から離れている僕たちだからこそ、日本の伝統芸能の大切さをより実感している気がします。だからこそ、日本人が観ても深いと思えるようなパフォーマンスをしたいですし、観た後に「日本の芸能っていいな」と思ってもらえるイベントにしたいと思っています。
濵田隆二
オーストラリアの和太鼓集団「TaikOz」で唯一の日本人メンバー。大学卒業後にワーキング・ホリデーで来豪。TaikOzのパフォーマンスの感銘を受け、2年間の研修の後に晴れてメンバーに。また、岩手県の伝統芸能「鬼剣舞」を現地で教わり、伝統文化を継承するため、シドニーで鬼剣舞の指導も行っている。