海外で活躍するプロ・サッカー選手を目指して
第67回 今回登場のワーホリ・メーカーは?
中川竜徳さん
1988年まれ・東京都出身
子どものころからサッカー選手に憧れるも、プレーする機会に恵まれず、そのまま社会人に。その後、海外で活躍する日本人サッカー選手の存在を知り、昨年モンゴルに渡り、プロ・デビューを果たす。ワーキング・ホリデー・ビザで今年1月に来豪し、NSW州の独立リーグ「Illawarra Mercury Premier League」のクラブと契約。今季は全試合に出場
中川さんの子どものころからの夢は、プロ・サッカー選手になることだった。生後3か月で海外に移住し、10年もの間マレーシアで過ごした中川さん。そこで出会ったのがサッカーだった。日本が初めてサッカーW杯の切符を手にしたマレーシアでの試合を生で観戦したことをきっかけに自然とサッカー選手を夢見るようになった。しかし、その後の彼の人生は、サッカーとの縁になかなか恵まれなかった。
日本に戻った中川さんは日本での学校生活に違和感を抱き、高校進学を機にオーストラリアへの留学を決意する。主な目的は語学力の習得ではあったが、サッカーに打ち込むため、スポーツに強い高校に進むことを決めた。しかし、このオーストラリアでの生活が人生で一番つらい時期だったという。単身で来豪したため、銀行開設や学校の手続きなども全て自分でやらなければならず、英語も満足に話せなかった15歳の彼には生活自体が大きな負担になった。サッカーを心の支えにしてなんとか1年半を過ごしたが、卒業までは難しいと判断し、高校2年生の時に帰国。この時の悔しい気持ちは中川さんの心の中にずっと残ることになる。
「人生で一番の挫折です。自分が許せない気持ちで、とにかくオーストラリアには良い思い出がありませんでした」
帰国後、中川さんは日本の高校に編入するが、教育制度がオーストラリアと異なるため1つ下の学年に編入。チームメイトと年齢が違うことや、これまでの環境との違いから自分らしさが出せず、サッカーに打ち込めなかったという。その後もスポーツ名門校の大学に進学するも、今度は経済的な理由でサッカーを続けられなくなる。所属する学部キャンパスとサッカー部のキャンパスが異なっていたため、往復5時間かけて通い、毎月高額な電車賃と部費を支払わなければならなかったのだ。結局、体力もお金ももたず、自らサッカー部を辞めてしまう。日本でスポーツを続ける金銭的な難しさに疑問を持つと同時に、サッカーとは縁がないと絶望した中川さんは、自らサッカーと距離を取りそのまま社会人になった。
何歳からでも挑戦できる
転機が訪れたのは社会人5年目の時。結局サッカー以上に情熱を傾けられるものが見つからず、このままではいけないと思っていた矢先、インターネットでマレーシアに日本人のプロ・サッカー選手がいることを知ったのだ。
「中途半端に諦めた夢を持ち続けてこの先ずっと後悔し続けたくないと思っていて、どこかでこの気持ちを解消しなくちゃいけないなと。そんな時にアジアのプロ・サッカーで活躍する日本人を知って、海外でプロになることで諦めていた夢を叶えたいと思いました」
中川さんはサッカーに打ち込めなかった大学の4年間分、再びサッカーに挑戦することを決意。自分をアピールするスキルが必要だと考え、プレーの写真や動画、経歴を掲載したウェブサイトも作った。そして昨年7月モンゴルに渡り、試験を受け、4カ月ではあったがトップ・リーグで念願のプロ・デビューを果たした。
「国は違いますが、夢だったプロとしてお客さんの前でプレーできたことは本当にうれしかったです。自信になりました」
そんな彼が次に向かった先がオーストラリア。人生の中で一番つらかった時期に向き合うためだった。今年1月に来豪し、ここでもNSW州の独立リーグのクラブと契約。全試合に出場する活躍を果たした。また同じクラブに所属する若いチームメイトから相談を受ける中で、若いころの自分とも向き合うようになったという。
「相談して来た若い子と自分の若いころを重ねたりして。そしたら、あの時の自分も頑張っていたなって、ようやく自分を認められるようになりました」
あと2年は海外でサッカーを続けるという中川さんだが、夢を諦めた人たちに、夢はさまざまな形で叶えられるということを伝えたいという。最後に、夢を叶えるためのアドバイスをもらった。「どんな環境でもプロになりたいといった信念を持つこと、そしてそれを実現するための勇気と柔軟さを持つことが必要だと思います。日本でプロになれなくても、海外に行けば自分を必要としてくれる人もいます。目的を変えなければ、手段は変えても良いと考えられる柔軟さが大事だと思います」
夢を叶えることよりも、夢のままで終わらせないために一歩踏み出すことが大切なのかもしれない。
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